この記事でわかること

喉頭がん・下咽頭がんのステージ4は、遠隔転移のない段階も含みます。手術ができなくても、化学放射線療法や薬物療法、飲み込みと栄養のケアがあります。余命・症状・選択肢を公的機関の情報で確認できます。
- 喉頭がん・下咽頭がんの「ステージ4(ⅣA期・ⅣB期・ⅣC期)」がどの状態を指すのか
- 喫煙・飲酒などの原因と、声のかすれや飲み込みの違和感といった症状
- 全国がん登録の進行度別5年生存率と、余命の数字の読み方
- 放射線治療・化学放射線療法・手術・薬物療法など治療の選択肢と費用
- 手術ができないときに、放射線治療のほかに取り組めること
- 当協会に寄せられた下咽頭がんの相談事例と、無料相談で整理できること
喉頭がん・咽頭がんはステージ4と言われても、できることがある

「喉頭がんがステージ4と言われた」「下咽頭がんで手術ができないと告げられ、放射線以外に取り組めることを知りたい」。この章では、喉頭がん・下咽頭がんのステージ4がどの状態を指すのかを公的機関の情報で整理し、この記事で扱う範囲を示します。手術ができない段階でも、治療とケアの選択肢は残っています。
喉頭がん・下咽頭がんの「ステージ4」「末期」とは、どの状態を指すのか

喉頭がんと下咽頭がんのステージ4は、ⅣA期、ⅣB期、ⅣC期の3つに分かれます。遠くの臓器に転移があるのは、ⅣC期だけ。ⅣA期とⅣB期は、がんがのどの周りの組織に広がった状態や、首のリンパ節への転移が進んだ状態を指します(出典:「喉頭がん 治療」)。
つまり、ステージ4と言われても、遠隔転移があるとは限りません。医学的に「末期」という区分もないのです。ⅣA期やⅣB期では、手術や化学放射線療法など、治癒を目指す治療が検討されます。まずは、自分がどの段階にあたるのかを確認しましょう。
この記事でわかる範囲と、情報の時点

この記事では、喉頭がんと下咽頭がんを中心に、原因、症状、種類、ステージ別の5年生存率、検査、治療法、そして手術ができない・ステージ4と言われたときの選択肢までをまとめました。医学的な事実は国立がん研究センターがん情報サービスの「喉頭がん」「下咽頭がん」と全国がん登録のデータを根拠にし、当協会の立場からの情報とは分けて書いています。
上咽頭がんと中咽頭がんは、位置や原因、ステージの分類が異なるため、違いを簡潔に紹介します。生存率は過去の診断例の数値で、これから治療を受ける人にそのまま当てはまるとは限りません。目安として読んでください。
手術ができないと言われても、選択肢の整理はこれから始められる

「手術はできません」と告げられると、放射線治療のほかに手立てがないように感じてしまう方は少なくありません。しかし喉頭がんや下咽頭がんには、放射線治療に薬を組み合わせる化学放射線療法や、免疫チェックポイント阻害薬を含む薬物療法があります。
飲み込みや栄養を支えるリハビリテーション、口の中のケア、緩和ケアも、治療を続けるための土台になる取り組み。標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせるという考え方もあります。大切なのは、選択肢を整理して主治医に確認することです。当協会では、その整理を無料でお手伝いしています。
喉頭がん・咽頭がんの原因と、なりやすい人の特徴

喉頭がんや咽頭がんは、喫煙や飲酒との関わりが深いがんです。この章では、わかっている発生要因と、予防や検診の現状を整理します。
喫煙と飲酒が主な発生要因、ウイルスが関わるものもある

喉頭がんが発生する主な要因は、喫煙と飲酒です(出典:「喉頭がん 予防・検診」)。特に喉頭がんは、喫煙の影響がほかのがんより強いとされています。下咽頭がんも、喫煙と飲酒が発生要因。
一方、中咽頭がんには、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となるものがあります。上咽頭がんは、EBウイルスが関連するものと、喫煙や飲酒が関連するものが多いがん。同じ「のどのがん」でも、原因は部位によって異なります。ただし、要因に当てはまる人が必ず発症するわけではありません。
予防は禁煙と節酒、指針で定められた検診はない

がん全般の予防には、禁煙、節酒、バランスのよい食事、体を動かすこと、適正体重の維持、感染の予防が有効とわかっています。喉頭がんや下咽頭がんでは、とくに禁煙と節酒が基本。治療中はもちろん、治療後も続けることが勧められています。
喉頭がんにも下咽頭がんにも、国の指針で定められた検診はありません。声のかすれが続く、飲み込むときに違和感があるといった症状に気づいたら、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。風邪に似た症状でも、長引くときは相談のサインです。受診先に迷うときは、かかりつけ医に相談する方法もあります。
喉頭がん・咽頭がんの初期症状と、進行したときの症状

のどのがんは、できる場所によって症状のあらわれ方が違います。この章では、喉頭がんと下咽頭がんの症状を中心に、気づくためのサインを整理します。
喉頭がんは、声のかすれが早い時期のサインになる

喉頭がんは、がんができる場所によって症状が異なります(出典:「喉頭がんについて」)。最も多い声門がんでは、早い時期から声のかすれ(嗄声)があらわれます。症状が早く出るぶん、比較的早期に見つかりやすいがんです。
声門上部がんの症状は、のどのいがらっぽさ、異物感、飲み込んだときの痛み。風邪と似ているため、気づくのが遅れることがあります。声門下部がんは、進行するまで症状がないことが多いタイプです。声のかすれやのどの違和感が続くときは、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
下咽頭がんは初期の症状が少なく、飲み込むときの違和感に注意

下咽頭がんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります(出典:「下咽頭がんについて」)。症状が出る場合は、飲み込むときの違和感、おさまらないのどの痛み、のどからの出血、耳の痛みなどがあらわれます。
口の奥やのど、首にしこりができたり、声が変わったりすることも。下咽頭は喉頭と隣り合っているため、見つかったときには喉頭までがんが広がっている場合もあります。「のどの調子が悪いだけ」と様子を見てしまう方もいますが、長引く症状は受診の理由になります。気になるときは、耳鼻咽喉科で相談してください。
進行すると、息苦しさや首のしこりがあらわれる

喉頭がんが進行して声門が狭くなると、息苦しさを感じるようになります。がんからの出血で、痰に血が混じることも。息苦しさを感じたら、我慢せず早めに受診してください。声のかすれが強くなってきたときも、同じように相談しましょう。
咽頭がんは、首のリンパ節に転移しやすいのが特徴です。がんが見つかった時点で、首のリンパ節への転移が見つかることも珍しくありません。上咽頭がんでは、首のしこりが最も多くみられる症状とされています。首のしこりに気づいたときも、耳鼻咽喉科で原因を確かめましょう。原因がわかれば、対処の方法も見えてきます。
喉頭がん・咽頭がんの種類と性質

喉頭がんと咽頭がんは、どちらも「頭頸部がん」に含まれますが、できる場所が異なります。この章では、それぞれの分類と性質、診断される人の数を整理します。
喉頭がんは、声門がん・声門上部がん・声門下部がんに分かれる

喉頭は「のどぼとけ」のところにあり、声を出したり呼吸を助けたりする器官です。左右一対の声帯と、それに囲まれた空間を声門といいます。喉頭がんは、できる場所によって声門がん、声門上部がん、声門下部がんの3つに分類。最も多いのは声門がんです。
声門がんは、頭頸部のほかのがんと比べて転移することが少ないがん。一方、声門上部がんと声門下部がんは、周りのリンパ液の流れが豊富なため、リンパ節に転移しやすいという特徴があります。組織の種類は、ほとんどが扁平上皮がんです。自分のがんがどの場所にあるのかを、主治医に確かめておきましょう。
咽頭がんは上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つ、ステージの分類も異なる

咽頭は、鼻の奥から食道までをつなぐ約13cmの管で、上から上咽頭、中咽頭、下咽頭に分かれます。下咽頭は喉頭と隣り合い、飲食物の通り道になる部分。がんの種類は、いずれもほとんどが扁平上皮がんです。
ステージの分類は、部位ごとに違います。上咽頭がんは0期からⅣB期まで。中咽頭がんは、HPVに関連するp16というタンパク質が陽性か陰性かで分類が分かれます。上咽頭がんは手術が難しい部位のため、放射線治療を主体とした治療が標準。「咽頭がん」と言われたときは、どの部位なのかを確認してください。
診断される人の数と、重複がんが多いという特徴

喉頭がんと診断されたのは、2023年に4,648例でした(出典:「がん統計 喉頭」)。男性が4,222例、女性が426例で、約9割が男性です。咽頭がんは統計上「口腔・咽頭」としてまとめられ、同じ年の診断数は23,771例でした。
喉頭がんや咽頭がんは、重複がんが多いことも特徴の一つ。同時に、または別の時期に、肺、食道、ほかの頭頸部などにがんが見つかることがあります。原因である喫煙や飲酒が、これらのがんの発生要因でもあるためです。検査の範囲が広く感じられても、見落としを防ぐための確認といえます。
ステージ別の状態と、5年生存率・余命の目安

「ステージ4と言われたけれど、あとどのくらい生きられるのか」。この章では、喉頭がん・下咽頭がんのステージの分類と、全国がん登録の進行度別5年生存率、数字の読み方を整理します。
0期〜ⅣC期の分類と、ⅣA期・ⅣB期・ⅣC期の違い

| ステージ | 主な状態(喉頭がん・下咽頭がん) |
|---|---|
| 0期〜Ⅱ期 | がんが上皮内や、発生した場所の近くにとどまっている。リンパ節転移はない |
| Ⅲ期 | がんがさらに広がり、声帯の動きが悪くなるなどの状態にある。または、がんと同じ側のリンパ節に3cm以下の転移が1個ある |
| ⅣA期 | がんがのどの軟骨や、甲状腺・食道など周りの組織に広がっている。または、3cmを超える転移や複数の転移など、リンパ節転移が進んでいる |
| ⅣB期 | がんが頸動脈の周りを囲む、縦隔に広がるなど、さらに広い範囲に及んでいる。または、6cmを超える転移や、リンパ節の外まで広がる転移がある |
| ⅣC期 | 遠くの臓器に転移がある(遠隔転移) |
喉頭がんと下咽頭がんのステージは、がんの広がり(T)、首のリンパ節への転移(N)、遠くの臓器への転移(M)の組み合わせで決まります。0期からⅣC期まであり、組み合わせ方は2つのがんで共通です。
ⅣA期とⅣB期は、遠隔転移のない段階。がんがのどの周りの組織へ広がった場合や、首のリンパ節への転移が大きい・多い場合にあたります。遠くの臓器に転移があると、ⅣC期です。
同じ「ステージ4」でも、治療の目標は大きく異なります。A・B・Cのどれにあたるのかを、主治医に確かめておくと安心でしょう。
全国がん登録にみる、喉頭がんと口腔・咽頭がんの5年相対生存率

| 進行度(2018年診断例) | 喉頭 | 口腔・咽頭 |
|---|---|---|
| 限局(発生した臓器にとどまる) | 94.5% | 86.9% |
| 領域(近くのリンパ節や周りの組織に広がる) | 54.3% | 56.3% |
| 遠隔(離れた臓器に転移) | 13.6% | 13.5% |
| 全体 | 81.6% | 63.9% |
全国がん登録では、2018年に診断された喉頭がん全体の5年相対生存率は81.6%です。進行度別にみると、がんが喉頭にとどまる「限局」が94.5%、近くのリンパ節や周りの組織に広がった「領域」が54.3%、離れた臓器に転移した「遠隔」が13.6%でした。
咽頭がんは「口腔・咽頭」としてまとめて集計されており、全体で63.9%、遠隔では13.5%。舌がんなど口のがんを含む数字で、下咽頭がんだけの値ではありません。これはステージではなく「進行度」の数値です。遠隔転移のないⅣA期・ⅣB期は、この表の「遠隔」にはあたらない点にも注意してください。
生存率の数字の読み方と、余命が数字どおりにならない理由

5年相対生存率は、あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標の一つです。過去に診断された人の集団の数値であり、その後に使えるようになった薬の効果は十分に反映されていません。一人ひとりの経過を示すものではないのです。
喉頭がんや下咽頭がんの薬物療法には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が使われています。余命は、ステージだけでなく、がんの場所や年齢、体の状態、治療の効き方でも変わるもの。数字だけで将来を決めつけないでください。見通しは、主治医に確かめるのが確実です。
進行の仕方と、転移・再発の特徴

喉頭がんや咽頭がんは、首のリンパ節に転移しやすく、離れた臓器に転移することもあります。この章では、広がり方と、再発に気づくための経過観察、再発したときの治療を整理します。
首のリンパ節に転移しやすく、肺・骨・肝臓に転移することもある

転移のしやすさは、がんのできる場所によって異なります。声門がんは、初期のうちは転移しにくいがん。声門上部がんや声門下部がんはリンパ節に転移しやすく、遠くの臓器に転移することもあります。喉頭がんの遠隔転移で最も多いのは、肺です。
下咽頭がんは、見つかった時点で首のリンパ節に転移していることも少なくありません。肺、骨、肝臓などに転移する場合もあります。首のリンパ節に転移があっても、リンパ節を取り除く頸部郭清術や放射線治療が行われます。転移があるからといって、治療の選択肢がなくなるわけではないのです。
再発は治療後3年以内に多く、少なくとも5年間は経過観察を続ける

治療後は、定期的に通院して検査を受けます(出典:「喉頭がん 療養」)。喉頭がんも下咽頭がんも、再発は治療後3年以内が多いとされています。少なくとも5年間は、経過観察のための通院が必要です。通院は、治療が終わったあとも続く大切な治療の一部です。
通院の際には、首の触診を含む診察や内視鏡検査、場合によってはCTなどの画像検査を行います。受診の間隔や検査の内容は、一人ひとりの状態によって異なるもの。気になる体調の変化があれば、次の受診を待たずに相談してください。治療後の禁煙と節酒も、続けていきましょう。
再発したときの治療は、最初に受けた治療で変わる

放射線治療は、原則として同じ部位に再び行うことができません。そのため、放射線治療のあとに再発した場合は、切除が可能であれば手術が選択されます。最初の治療で放射線治療を行っていない場合は、放射線治療を含めて検討。
再発して手術や放射線治療ができない場合や、遠隔転移がある場合には、薬物療法を行うことがあります。目的は、がんを小さくして症状を和らげ、生活の質を保つこと。体調や合併症によって薬物療法が難しいときは、症状を和らげる治療が勧められることもあります。次の治療を、主治医と一緒に考えていきましょう。
喉頭がん・咽頭がんの検査方法

のどのがんの検査は、がんかどうかを確定する検査と、広がりを調べる検査の2段階です。この章では、それぞれの検査でわかることを整理します。
内視鏡検査と生検で、がんかどうかを確定する

喉頭がんや下咽頭がんが疑われたときは、内視鏡検査でのどを観察します(出典:「喉頭がん 検査」)。のどに局所麻酔をかけ、吐き気や痛みを抑えたうえで、内視鏡を鼻や口から入れる検査。声帯の動きや、空気の通り道が狭くなっていないかも確認します。
がんが疑われる場合は、病変の一部を採って顕微鏡で調べる生検を行い、がんかどうかを確定します。喉頭がんや下咽頭がんでは、食道や胃に重複がんができることも。そのため、胃カメラで食道から胃まで確認することが勧められています。検査への不安は、事前に伝えておいてかまいません。
CT・MRI・超音波・PETで、がんの広がりと転移を調べる

CT検査は、がんの深さや広がり、リンパ節や離れた臓器への転移を調べる検査です。MRI検査は、CTとは異なる仕組みで画像をつくるため、あわせて行うとより正確な診断につながります。首の表面から超音波をあてる検査は、主に首のリンパ節への転移を調べるために行います。
PET検査は、がんの広がりや転移の有無を、CTやMRIとは異なる情報から調べる検査。治療後の再発の診断に役立つこともあります。喉頭がんや下咽頭がんには、診断や治療効果の判定に使える特定の腫瘍マーカーが、今のところありません。どの検査で何を調べるのか、主治医に尋ねてみてください。
喉頭がん・咽頭がんの治療方法と費用感

喉頭がんや下咽頭がんの治療には、放射線治療、化学放射線療法、手術、薬物療法があります。この章では、治療の選び方とそれぞれの治療、費用、標準治療に統合医療を組み合わせる考え方を整理します。
ステージと「声を残すかどうか」で決まる、治療の選び方

喉頭がんの治療は、がんの進行度と、喉頭の機能を残すかどうかによって選びます。0期からⅡ期で勧められているのは、放射線治療か喉頭を温存する手術で、声を出す機能を残すこと。Ⅲ期以上では、喉頭を残すことを目指す化学放射線療法か、喉頭をすべて取り除く手術かを選択します。
下咽頭がんも、早期では喉頭の温存を目指し、進行している場合は手術が主な治療です。ただ、生活の質を保つために、化学放射線療法や喉頭温存手術を行う場合もあります。遠くの臓器に転移があるⅣC期では、薬物療法を行うかどうかを検討。何を優先したいのかを、主治医に伝えてください。
放射線治療と化学放射線療法

放射線治療は、喉頭を切除しないため、声を出す機能を残すことが期待できる治療です。体の外から放射線をあてる外部照射を、1日1回、6〜7週間かけて30〜35回ほど受けます。照射中は、頭と首が動かないようにシェルという固定具を使います。
放射線治療と薬物療法を併用するのが、化学放射線療法。病気の進み具合によっては、放射線治療だけの場合より、がんの進行を抑える効果や声を残せる可能性が高いと報告されています。一方で、粘膜炎による飲み込みにくさや皮膚炎などの副作用が強く出ることも。行うかどうかは、がんや体の状態を踏まえて医師と相談しながら決めます。
手術、喉頭を残す手術と喉頭全摘出術

手術には、喉頭を残して声を出す機能を保つ喉頭温存手術と、喉頭をすべて取り除く喉頭全摘出術があります。首のリンパ節に転移がある場合に行うのが、リンパ節を周りの組織ごと切除する頸部郭清術です。下咽頭がんで切除範囲が大きいときは、腸の一部や皮膚を移植して再建します。
喉頭をすべて取ると声を出せなくなり、首に呼吸のための穴(永久気管孔)を開けることに。ただ、食道発声、電気式人工喉頭、シャント発声といった代用音声を習得する道があります。喉頭全摘出術を受けた人は、身体障害者手帳の対象。失うものと残せるものを、手術の前に担当医とよく確認してください。
薬物療法、治療の前後に行う場合と、再発・転移で行う場合

薬物療法には、治癒や機能の温存を目指して行うものと、再発・転移した場合に行うものがあります。前者にあたるのは、放射線治療と同時に行う化学放射線療法、治療の前に行う導入化学療法、手術のあとに行う術後化学放射線療法の3つです。
再発や転移に対しては、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使います。免疫チェックポイント阻害薬は、治療が終わって数週間から数カ月後に副作用が起こることもある薬。いつもと違う症状を感じたら、すぐに医師や薬剤師、看護師へ伝えてください。起こりうる副作用を、事前に知っておくと安心です。
治療費は保険診療が基本、高額療養費制度で自己負担に上限がある

喉頭がんや下咽頭がんの放射線治療、手術、薬物療法などの標準治療は、保険診療で受けられます。医療費が一定額以上になった場合は、高額療養費制度を利用して、自己負担限度額までの支払いとすることが可能です。
一方、がん情報サービスは、下咽頭がんの免疫療法で効果が証明されているのは免疫チェックポイント阻害薬を使う治療法のみで、自由診療として行われる免疫療法には注意が必要としています。自由診療を検討するときは、効果の根拠と費用を確かめてください。費用の不安は、ソーシャルワーカーやがん相談支援センターにも相談できます。
統合医療・自然療法を組み合わせるという選択肢

統合医療は、厚生労働省の検討会で「近代西洋医学を前提として、これに補完代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOLを向上させる医療」と位置づけられています。標準治療をサポートする形で、食事の改善、運動、温熱療法、心のケアなどを組み合わせる考え方です。
補完代替療法の多くは自由診療で、自己負担が増えることも少なくありません。のどのがんでは食事がとりにくくなることがあるため、栄養や体力を保つ工夫を取り入れる方もいます。取り入れるものは必ず主治医に伝え、根拠と費用を確認して選んでください。
当協会は、この定義に基づき、標準治療をサポートする形で信頼性の高い補完代替療法の情報を整理・提供している一般社団法人です。医師や大学教授が理事を務め、特定の商品や治療法を勧めることはありません。協会が紹介している療法の分類は、次のページで確認できます。
手術ができない・ステージ4と言われたときの選択肢

「下咽頭がんで手術ができないと言われた。放射線以外に取り組めることはあるのか」。この章では、その問いに沿って、手術ができない理由、薬を組み合わせる治療、飲み込みと栄養のケア、自分でできること、療養の場所、主治医への確認事項を順に整理します。
手術ができないと言われる主な理由

手術ができないと言われる理由は、人によって異なります。がんが周りの組織へ広く及んでいて切除が難しい場合、遠くの臓器に転移がある場合、年齢や持病から体が手術に耐えられないと考えられる場合などです。
理由によって、次に検討する治療は変わります。声を残すために、手術ではなく化学放射線療法を選ぶ場合もあるでしょう。「できない」のか、「別の治療のほうが合っている」のか。この違いを知ることが、次の一歩の出発点です。遠慮せず、主治医に尋ねてください。理由がわかると、次に選べる治療も見えてきます。
放射線治療に薬を組み合わせる、化学放射線療法という選択

「放射線以外に取り組めること」としてまず確認したいのが、薬物療法との併用です。化学放射線療法は、手術を行わずに放射線治療と薬物療法を併用し、治癒を目指す方法。併用することで、治療の効果を高められます(出典:「下咽頭がん 治療」)。
ただし、副作用は放射線治療や薬物療法を単独で行うより強くあらわれることが多く、体への負担も大きくなります。年齢や持病、体力によっては、放射線治療のみを選ぶこともあるでしょう。併用するかどうかは、効果と負担の両方を聞いたうえで、医師と相談しながら決めてください。
ステージ4と告げられ、「これからの治療を一人で決めなければ」と焦っていた60代の男性は、当協会の相談で急かされずに話を聞いてもらい、選択肢の整理と主治医に確認すべきことを一緒に考えてもらえたことで、納得して治療に向き合えたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。抗がん薬の副作用との付き合い方は、次の記事も参考にしてください。
薬物療法と、保険診療で受けられるようになった治療

遠隔転移がある場合や、再発して手術や放射線治療ができない場合には、薬物療法を行うことがあります。使うのは、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬。体の状態に応じて、いくつかを併用したり、1つの薬で治療したりします。
手術の対象にならない局所進行・局所再発の頭頸部がんには、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)や、薬とレーザー光を使うアルミノックス治療(光免疫療法)も保険診療で受けられるようになりました。ただし、標準治療が優先で、受けられる条件や施設は限られています。対象になるかどうかは、まず担当医に確認してください。
余命1年と告げられ、諦めるしかないと思っていた60代の男性は、当協会の相談で「この状況でもまだやれることがたくさんある」と助言を受け、専門家に最後まで継続的に支えてもらえたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。余命を告げられたときの考え方や選択肢は、次の記事にもまとめました。
飲み込みと栄養を支える、リハビリテーションと胃ろう

放射線治療中は、粘膜炎や唾液の減少によって、食べ物を飲み込みにくくなります。誤って気管に入る誤嚥は、肺炎につながるおそれも。そのため、治療の前や治療中から、言語聴覚士や看護師と一緒に飲み込みのリハビリテーションを始めることが勧められています。
食事がとりにくいときは、おなかから胃へ管を通す胃ろうで、栄養や薬を補う方法があります。栄養状態や体力の低下を防ぎ、治療の中断や入院のリスクを減らすことにつながる処置。口から十分に食べられるようになれば、管は抜けます。食べられない日が続く前に、早めに相談してください。
口の中のケアと禁煙、治療中に自分でできること

自分で取り組めることの一つが、口腔ケアです。放射線治療で唾液が減ると、粘膜の感染やむし歯が起こりやすくなります。やさしい歯みがき、うがい、こまめな水分補給で、口の中を清潔で潤った状態に保ちましょう。照射する部分の皮膚も、清潔と保湿が基本です。
もう一つは、禁煙。喫煙を続けると、薬物療法や放射線治療の効果が下がることが報告されています。治療が始まる前に、禁煙しておきましょう。治療後の安静期間を過ぎたら、なるべくのどを使って話すことも機能の回復を助けます。無理のない範囲で、できることから続けてください。
在宅緩和ケアと緩和ケア病棟(ホスピス)から、療養の場所を選ぶ

緩和ケアは、終末期だけでなく、診断時から行われるすべてのがん治療の土台です。受ける場は、通院、入院、在宅療養の3つ(出典:「緩和ケア」)。緩和ケア病棟は、できる限り普段に近い暮らしができるように作られた病棟です。
入院を待つ人がいる場合もあるため、早めに担当医へ相談しましょう。自宅で過ごす場合は、訪問診療や訪問看護などのサービスを整える必要があります。療養の場所や利用できる制度については、がん相談支援センターでも相談可能。本人の希望と家族の負担を、合わせて考えていきます。
緩和ケアやホスピスをすすめられたときに検討したいことは、次の記事をご覧ください。
主治医に確認しておきたい質問と、セカンドオピニオン

確認しておきたいのは、ステージ(ⅣA期・ⅣB期・ⅣC期のどれか)、手術ができない理由、提案されている治療の目的と見通し、声や飲み込みへの影響、副作用が出たときの対処、ほかに受けられる治療があるか、といった点です。納得して治療を選ぶための、大切な準備になります。
ご家族が同席すれば、あとで内容を確かめ合えるでしょう。別の医師の意見を聞くセカンドオピニオンは、納得して治療を受けるために認められている仕組み(出典:「セカンドオピニオン」)。担当医に気を遣ったり、遠慮したりする必要はありません。
当協会に寄せられた下咽頭がんの相談事例と無料相談

一般社団法人日本がん難病サポート協会には、のどのがんで手術ができないと言われた方からのご相談も寄せられています。この章では、実際の相談事例と、無料相談で一緒に整理できることをご紹介します。
手術ができず放射線治療を選ばれた、70歳男性の相談事例

当協会に相談された70歳の男性は、ステージ4の下咽頭腫瘍と診断され、手術ができない状態でした。化学療法は受けず、放射線治療のみを受けることを選ばれた方です。
相談を通じて選択肢を整理し、放射線治療を受けながら、自然療法をメインに取り組まれた結果、5カ月ほどで腫瘍が不明瞭になったと伺っています。これは当協会に寄せられた個人の相談事例であり、同じ経過をたどることを保証するものではありません。当協会は、標準治療をやめることを勧めるものでもありません。
治療の選び方は、主治医と十分に話し合って決めることが前提です。
ご家族だけの相談、匿名・オンラインでも相談できる

当協会の無料相談は、電話(平日9時〜18時)、メール(365日24時間受付)、オンラインや対面に対応しています。匿名でも可能で、ご本人が同席されないご家族だけのご相談も歓迎です。声が出しにくい方は、メールでご相談いただけます。
のどのがんでは、声や食事のことなど、暮らしに直結する悩みを抱える方も多いもの。「何から考えればいいかわからない」という状態のままで構いません。当協会は医療機関ではなく、診断や治療は行いません。公的機関の情報をもとに考え方を整理し、主治医との対話を後押しすることが役割です。
父の治療のことでご家族だけで相談された40代の男性からは、「家の中では出せない気持ちを第三者に話せるだけで、こんなに軽くなるものかと思いました」という声が届いています(当協会「ご相談者の声」より)。同じ立場の方の声は、次のページもあわせてご覧ください。
無料相談で一緒に整理できること

無料相談では、提示されている治療の選択肢の整理、次の診察で主治医に確認したい質問の書き出し、声や食事の変化との付き合い方、これからの時間の過ごし方、ご家族との関わり方などをお話しいただけます。
統合医療や補完代替療法について気になる情報があれば、公的機関の情報をもとに見極め方を一緒に考えましょう。特定の商品や治療法の勧誘は行っていません。手術ができないと言われた直後は、気持ちの整理が追いつかないもの。一人で抱え込む前に、まずは一度お話しください。ご家族だけのご相談も歓迎しています。
【まとめ】 喉頭がん・咽頭がんはステージ4でも、選択肢を整理すれば今できることが見えてくる

喉頭がんは声のかすれ、下咽頭がんは飲み込むときの違和感が気づくきっかけになるがんです。全国がん登録の2018年診断例では、喉頭がんの5年相対生存率は全体で81.6%、離れた臓器に転移した「遠隔」では13.6%でした。
ステージ4にはⅣA期・ⅣB期・ⅣC期があり、遠隔転移があるのはⅣC期だけ。手術ができない場合でも、化学放射線療法や薬物療法が検討されます。飲み込みのリハビリテーションや口腔ケア、緩和ケアも治療を支える取り組み。標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせる道もあります。まずは、主治医に確認したいことを整理するところから始めてみてください。
手術ができないと言われても、まずは無料相談でお話しください

喉頭がんや下咽頭がんで手術ができないと言われた、放射線治療のほかにできることを知りたい、声や食事のことが不安、ご家族としてどう支えればいいかわからない。当協会には、そうした段階の方からのご相談が多く寄せられています。公的機関の情報をもとに、選択肢と主治医に確認したいことを一緒に整理し、主治医との対話を後押しします。
お電話でのご相談は 03-5657-0995(平日9時〜18時)。メールでのご相談は365日24時間受け付けています。ご家族だけのご相談も可能です。
ほかの部位の相談事例は「がんの部位別事例一覧」でも紹介しています。
よくある質問

下咽頭がんで手術ができないと言われました。放射線以外に取り組めることはありますか?

あります。まず、放射線治療に薬物療法を併用する化学放射線療法の対象になるかを、主治医に確認しましょう。あわせて、飲み込みのリハビリテーション、口腔ケア、禁煙、栄養を補う胃ろうなど、治療を続けるための取り組みもあります。つらさを和らげる緩和ケアは、診断時から受けられます。
詳しくは 化学放射線療法という選択 を参照してください。
喉頭がん・咽頭がんステージ4の余命はどのくらいですか?

余命を一律に示す公的な数値はありません。全国がん登録の2018年診断例では、離れた臓器に転移した「遠隔」の5年相対生存率は、喉頭がんで13.6%、口腔・咽頭がんで13.5%でした。ただし、ステージ4には遠隔転移のないⅣA期・ⅣB期も含まれます。見通しは、主治医に確かめてください。
詳しくは 喉頭がんと口腔・咽頭がんの5年相対生存率 を参照してください。
喉頭がんのステージ4は、すべて遠隔転移があるのですか?

いいえ。喉頭がんと下咽頭がんのステージ4は、ⅣA期・ⅣB期・ⅣC期に分かれ、遠くの臓器に転移があるのはⅣC期だけです。ⅣA期とⅣB期は、がんがのどの周りの組織に広がった状態や、首のリンパ節への転移が進んだ状態。手術や化学放射線療法など、治癒を目指す治療が検討されます。
詳しくは ⅣA期・ⅣB期・ⅣC期の違い を参照してください。
喉頭がんは治りますか?

ステージや体の状態によって異なります。0期からⅡ期では、放射線治療か喉頭を残す手術で、声を出す機能を残すことが勧められています。Ⅲ期以上の進行がんでは、化学放射線療法か喉頭全摘出術を選択。全国がん登録の2018年診断例では、喉頭がん全体の5年相対生存率は81.6%でした。見通しは、主治医に確かめましょう。
詳しくは 治療の選び方 を参照してください。
喉頭がんはどこに転移しやすいですか?

がんができる場所によって異なります。声門がんは、初期のうちは転移しにくいがんです。声門上部がんや声門下部がんは首のリンパ節に転移しやすく、遠くの臓器に転移することもあります。遠隔転移で最も多いのは肺。下咽頭がんは首のリンパ節のほか、肺、骨、肝臓などに転移することがあります。
詳しくは 転移の特徴 を参照してください。
喉頭がん・咽頭がんの原因は何ですか?

喉頭がんと下咽頭がんの主な発生要因は、喫煙と飲酒です。喉頭がんは、喫煙の影響がほかのがんより強いとされています。中咽頭がんにはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となるものがあり、上咽頭がんはEBウイルスが関連するものが多いがん。国の指針で定められた検診はありません。
詳しくは のどのがんの発生要因 を参照してください。
喉頭をすべて取ると、声は出せなくなりますか?

声帯を含む喉頭を取り除くため、手術のあとはもとの声を出せなくなります。ただ、食道発声、電気式人工喉頭、シャント発声といった代用音声を習得できます。習得の難しさや声の聞きやすさは方法ごとに違うため、自分に合うものを選びましょう。喉頭全摘出術を受けた人は、身体障害者手帳の対象です。
詳しくは 喉頭全摘出術 を参照してください。
放射線治療中に食事がとれなくなったら、どうすればよいですか?

我慢せず、早めに担当医や看護師へ伝えてください。粘膜炎の痛みには、食事をやわらかくする工夫や痛み止めで対処します。口から十分にとれないときは、胃ろうから栄養や薬を補う方法も。栄養状態や体力の低下を防ぎ、治療の中断を避けることにつながります。食べられるようになれば、管は抜けます。
詳しくは 飲み込みと栄養のケア を参照してください。
家族が喉頭がん・咽頭がんのステージ4と言われたら、家族にできることは何ですか?

まず本人の気持ちと希望を聞き、主治医の説明に同席して、治療の目的や選択肢を一緒に確認しましょう。声が出しにくいときは、筆談や身ぶりを交えて、急がせずに話を聞くことも支えになります。家族自身の不安を一人で抱える必要はありません。当協会の無料相談などで、気持ちを話してみてください。
詳しくは 無料相談で整理できること を参照してください。
出典
本記事の医学的な事実と統計は、次の公的機関の一次情報に基づいています(2026年10月閲覧)。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「喉頭がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「下咽頭がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん」「上咽頭がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」
- 喉頭/口腔・咽頭(診断数2023年、5年相対生存率2018年診断例、相対生存率の定義)
- 全国がん登録生存率データ cancer_survivalNCR(2016-2018).xlsx(最新データ〈進行度別〉シート、喉頭 C32、口腔・咽頭 C00-C14)
- 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会による統合医療の位置づけ(厚生労働省 eJIM、統合医療に関する日本の見解と意向)
| 本記事で示した数値 | 出典 |
|---|---|
| 喉頭がんの診断数 4,648例(男性4,222例、女性426例。2023年) | がん統計「喉頭」 |
| 口腔・咽頭がんの診断数 23,771例(2023年) | がん統計「口腔・咽頭」 |
| 喉頭の5年相対生存率 全体81.6%、限局94.5%、領域54.3%、遠隔13.6%(2018年診断例) | 全国がん登録生存率データ(最新データ〈進行度別〉) |
| 口腔・咽頭の5年相対生存率 全体63.9%、限局86.9%、領域56.3%、遠隔13.5%(2018年診断例) | 同上 |
| 放射線治療の回数 30〜35回、6〜7週間 | 喉頭がん 治療 |
| 再発は治療後3年以内が多い、経過観察は少なくとも5年間 | 喉頭がん 療養、下咽頭がん 療養 |

