この記事でわかること

腎臓がんはステージ4でも、手術を控えた段階でも、薬物療法や体調管理、緩和ケアなど整理できる選択肢があります。症状・生存率・選択肢を公的機関の情報で確認できます。
- 腎臓がんの「ステージ4」「末期」がどの状態を指すのか
- 初期症状から、血尿や肺・骨・脳への転移による症状までの見通し
- 全国がん登録の進行度別5年生存率と、リスク分類による見通しの読み方
- 手術を控えているときに、手術までの期間にできること
- ステージ4で手術が難しいときの薬物療法・転移巣の治療・緩和ケア
- 当協会に寄せられた腎臓がんの相談事例と、無料相談で整理できること
腎臓がんはステージ4(末期)でも、できることがある

「腎臓がんのステージ4と言われた」「手術を控えているが、それまでに何ができるのか」。この章では、ステージ4や末期がどの状態を指すのかを公的機関の情報で整理し、この記事で扱う範囲を示します。転移がある段階でも、手術前の段階でも、整理できることは残っています。
腎臓がんの「ステージ4」「末期」とは、どの状態を指すのか

腎臓がんのステージ4とは、がんが腎臓をおおう一番外側の膜(ゲロタ筋膜)を越えて広がっている状態か、肺や骨など離れた臓器に転移がある状態です。ステージはⅠ期からⅣ期に分けられ、がんの広がり、リンパ節転移、遠隔転移の組み合わせで決まります(出典:「腎臓がん(腎細胞がん) 治療」)。
医学的に「末期」という区分はなく、一般にはⅣ期や治療の選択肢が限られた状態を指して使われます。ステージ4でも薬物療法の対象になる人は多く、「末期=何もできない」ではありません。まずは自分の病期を確認しましょう。
この記事でわかる範囲と、情報の時点

この記事では、腎臓がんの原因から症状、種類、ステージ別の5年生存率、検査、治療法、そして手術を控えているときや手術が難しいときの選択肢までを、一覧で把握できるようにまとめています。医学的な事実は国立がん研究センターがん情報サービスの「腎臓がん(腎細胞がん)」と全国がん登録のデータを根拠にし、当協会の立場からの情報とは分けて書いています。
対象は腎臓がんのほとんどを占める腎細胞がんで、腎盂がんや小児の腎腫瘍は含みません。数値は過去の診断例のものなので、これから治療を受ける人にそのまま当てはまるとは限りません。
手術を控えている段階でも、転移がある段階でも、整理できることがある

「手術まで何もせず待つしかないのか」「転移があると言われたら、もう終わりなのか」。そう感じている方は少なくありません。腎臓がんでは、手術の前に持病や体調を整えておくことが術後の生活にもつながり、転移がある場合でも分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法が治療の中心として残ります。
標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせるという考え方もあります。大切なのは、選択肢を整理して主治医に確認することです。当協会ではその整理を無料で一緒に行っています。
腎臓がんの原因と、なりやすい人の特徴

腎臓がんの原因として、公的機関はいくつかの危険因子を挙げています。この章では、生活習慣や持病に関わる要因、遺伝に関わる要因、そして予防や検診の現状を整理します。
喫煙と肥満、長期の腎透析が危険因子とされている

腎細胞がんの危険因子として、喫煙と肥満が挙げられています(出典:「腎臓がん(腎細胞がん) 予防・検診」)。また、長期にわたって腎透析を受けていることも、腎細胞がんの危険因子になると考えられています。
喫煙と肥満はどちらも生活の中で見直せる要因で、診断を受けた後も、禁煙や適正体重の維持は体調管理の基本になります。長く透析を続けている方は、血尿や腰の痛みなど気になる症状があれば、早めに担当医に相談してください。禁煙の方法や体重管理に迷うときは、主治医やがん相談支援センターに相談することもできます。
フォン・ヒッペル・リンドウ病など、遺伝が関わるもの

腎細胞がんと関連する病気として、遺伝子の変異が原因で発症するフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病などが知られています。ただし、この遺伝子変異があるからといって必ずしもがんになるわけではありません。
血縁者に関連する病気の方がいるなど気になる場合は、遺伝医学の専門家がいる施設で遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。施設の情報は、全国のがん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターで確認できます。家族の病歴を整理しておくと、相談のときに役立つでしょう。
腎臓がん特有の予防法と検診は、まだ確立されていない

腎細胞がんについては、現在のところ特有の予防法は確立されていません。日本人を対象とした研究では、がん全般の予防として禁煙、節酒、バランスのよい食事、活発な身体活動、適正な体形の維持、感染の予防が有効とされています。
また、厚生労働省の指針で定められた腎臓がんの検診もありません。小さな腎臓がんの多くは健康診断やほかの病気の検査で偶然見つかっているため、健診の機会を活かし、気になる症状があるときは検診を待たずに受診することが勧められています。予防法が限られるからこそ、生活習慣の見直しと早めの受診が基本になります。
腎臓がんの初期症状と、進行・転移したときの症状

腎臓がんは初期にほとんど症状が出ず、転移した先の症状がきっかけで見つかることもあるがんです。この章では、初期の特徴から、がんが大きくなったときの症状、転移による症状までを段階ごとに整理します。
初期はほとんど自覚症状がなく、健診や他の検査で偶然見つかることが多い

腎臓がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がありません(出典:「腎臓がん(腎細胞がん)について」)。そのため、小さいうちに見つかる腎細胞がんのほとんどは、健康診断やほかの病気を調べる検査で偶然発見されています。
全国がん登録の2018年診断例でも、腎・尿路(膀胱除く)のがんの約56%は、がんが臓器にとどまる「限局」の段階で見つかっています。健診で腎臓の影を指摘されたら、症状がなくても精密検査を受けることが早期発見につながるでしょう。限局で見つかった場合の5年相対生存率は93.5%です。
大きくなると現れる血尿・背中や腰の痛み・腹部のしこり

腎細胞がんが大きくなると、血尿が出たり、背中や腰の痛み、腹部のしこりが現れたりすることがあります。このほか、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、おなかの痛みが生じることもあります。これらは膀胱炎や結石、胃腸の不調など、ほかの病気でも起こる症状のため、様子を見てしまう人も少なくありません。
気になる症状がある場合は、早めに泌尿器科を受診することが大切です。症状が続くときは、自己判断せずに一度検査を受けてください。受診の際は、いつからどんな症状があるかをメモして伝えると診察がスムーズです。
肺・骨・脳への転移で現れる症状と、全身の症状

転移による症状は、転移した場所によってさまざまです。肺への転移では胸の痛みや咳、血の混じった痰、骨への転移では骨の痛みや骨折、脳への転移では頭痛や片側の手足のまひなどが見られます。がんが全身に広がると、発熱や倦怠感、体重減少といった全身の症状が現れます。
腎臓がんでは、こうした転移先の症状が先に出て、詳しく調べた結果、腎細胞がんがわかることも少なくありません。症状は我慢せず、早めに医療者に伝えてください。痛みや息苦しさは、放射線治療や痛みをとる薬でやわらげられることがあります。
腎臓がんの種類と、腎盂がんとの違い

「腎臓がん」と一口にいっても、腎臓のどこから発生したか、どの組織型かによって性質や治療法が異なります。この章では、公的機関の分類に沿って腎臓がんの種類を整理します。
腎臓がんのほとんどは、腎実質から発生する腎細胞がん

腎臓は、ソラマメのような形をした握りこぶしほどの大きさの臓器で、肋骨の下端あたりの背中側に左右1つずつあります。血液をろ過して尿をつくるほか、血圧の調整や造血に関わるホルモンの生成なども担っています。
腎臓がんは腎臓の細胞ががん化したもので、このうち尿をつくる腎実質の細胞から発生したものが腎細胞がんです。腎臓がんのほとんどが腎細胞がんのため、一般に「腎臓がん」といえば腎細胞がんを指します。がんが腎臓のどの部分にあるかによって、選べる手術の方法も変わってきます。
淡明細胞型が7〜8割、全部で14種類の組織型がある

腎細胞がんは、顕微鏡で見たときのがん組織の見え方によって組織型に分類されます。最も多いのは淡明細胞型腎細胞がんで、全体の7〜8割を占めます。
そのほか乳頭状腎細胞がんなどがあり、組織型は合わせて14種類です。同じがんの中に、複数の組織型が混在していることもあります。
組織型は、転移がある場合に最初に使う薬を選ぶ判断材料になるため、自分のがんの組織型を主治医に確認しておくと、提案された治療の意味を理解しやすくなります。組織型を確認できるのは、病理検査の結果です。
腎盂がんは、性質と治療法が異なる別のがんとして扱われる

同じ腎臓にできたがんでも、尿が集まる腎盂の細胞から発生したものは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは区別されます。腎細胞がんと腎盂がんでは、がんの性質や治療法が異なるためです。
インターネットで情報を調べるときに両者を混同すると、自分に当てはまらない治療法や数字を読んでしまうことがあります。診断の際に、どちらのがんかを主治医に確認しておきましょう。
なお、小児に多い腎芽腫(ウィルムス腫瘍)も別の病気として扱われ、この記事の対象には含めていません。説明書や検査結果に書かれた病名を確認しておくと安心です。
ステージ別の状態と、5年生存率・余命の目安

「ステージ4の余命はどのくらいか」は、腎臓がんで最も多く検索されている疑問の一つです。この章では、ステージ分類と全国がん登録にもとづく5年相対生存率、転移がある場合の見通しに使われるリスク分類を示し、数字の読み方を整理します。
ステージ1〜4の分類、がんの大きさ・リンパ節・遠隔転移で決まる

| ステージ | 主な状態 |
|---|---|
| Ⅰ期 | がんの直径が7cm以下で腎臓にとどまり、転移がない |
| Ⅱ期 | がんの直径が7cmを超えるが腎臓にとどまり、転移がない |
| Ⅲ期 | がんが腎静脈や下大静脈、腎臓周囲の脂肪組織に広がっている(ゲロタ筋膜は越えない)、またはリンパ節に転移がある |
| Ⅳ期 | がんがゲロタ筋膜を越えて広がっている、または肺や骨など離れた臓器に転移がある |
腎細胞がんのステージは、がんの大きさや広がり(T)、リンパ節への転移(N)、離れた臓器への転移(M)の組み合わせで決まります。がんの直径が7cm以下で腎臓にとどまっていればⅠ期、7cmを超えても腎臓にとどまっていればⅡ期です。
腎静脈や下大静脈、腎臓周囲の脂肪組織に広がっている場合や、リンパ節に転移がある場合はⅢ期になります。がんがゲロタ筋膜を越えている場合や、離れた臓器に転移がある場合がⅣ期です。自分がどのステージに当たるかは、T・N・Mそれぞれの評価とあわせて主治医に確認しておくと、治療方針の説明を理解しやすくなります。
全国がん登録にみる、腎・尿路がんの5年相対生存率

| 進行度(2018年診断例) | 対象者数 | 5年相対生存率 |
|---|---|---|
| 全体 | 25,757例 | 70.3% |
| 限局(臓器にとどまる) | 14,350例 | 93.5% |
| 領域(周囲の組織・リンパ節に広がる) | 4,986例 | 60.2% |
| 遠隔(離れた臓器に転移) | 3,714例 | 15.3% |
2023年に腎・尿路(膀胱除く)のがんと診断されたのは30,845例、2024年の死亡数は10,325人です(出典:「腎・尿路(膀胱除く) がん統計」)。全国がん登録の2018年診断例では、5年相対生存率は全体で70.3%でした。進行度別では、限局で93.5%、領域で60.2%、遠隔で15.3%です。
なお、この統計は腎細胞がんに腎盂がんや尿管がんなどを合わせた数値で、腎臓がん単独の値ではありません。相対生存率は、がん以外の死因の影響を除いて、診断から5年後に生存している割合を示す指標です。
転移がある腎細胞がんの見通しを左右する、リスク分類

転移のある腎細胞がんでは、見通し(予後)を予測するためにリスク分類が使われ、薬物療法を選ぶ判断材料にもなります。代表的なMSKCC分類では、初診から治療開始まで1年未満、全身状態の低下、貧血、補正カルシウム値の上昇、LDH値の上昇という5項目のうち、当てはまる数で低・中・高リスクに分けます。
分子標的薬による治療の予後予測に使われるのが、IMDC分類です。同じステージ4でもリスクによって見通しも治療も変わるため、自分のリスク分類を主治医に確認しておきましょう。
生存率の数字の読み方と、余命が数字どおりにならない理由

遠隔転移で15.3%という数字を、「ほとんどの人が5年以内に亡くなる」と受け取る必要はありません。この数値は腎盂がんや尿管がんを含む集計で、全国がん登録の「遠隔」はステージ4とも完全には一致しません。
さらに2018年に診断された人の過去の数値で、その後の治療の進歩は反映されていません。個人の経過は、組織型やリスク分類、体力、治療への反応で大きく変わります。数字は見通しの目安として受け止め、いまできることを考える材料に使ってください。
医師から余命を告げられた場合も、それは統計上の目安であって期限ではありません。余命宣告を受けたあとの考え方や、当協会に寄せられた事例は次の記事で整理しています。
進行の仕方と、再発・転移しやすい部位

腎臓がんは離れた臓器に転移することがあり、手術で取りきった後でも長い期間をおいて再発することがあるがんです。この章では、転移しやすい部位と、転移が先に見つかるケース、再発の特徴を整理します。
最も転移しやすいのは肺、次いで骨・肝臓・副腎・脳

腎細胞がんはさまざまな部位や臓器に転移する可能性があり、特に転移しやすいのは肺です。そのほか、骨、肝臓、副腎、脳などに転移することもあります。
ステージ分類では、こうした離れた臓器への転移があればⅣ期です。転移がある場合は、転移した場所や数、体の状態に応じて、薬物療法、転移巣の手術、放射線治療を組み合わせて検討します。
転移がわかっても、それぞれの転移に対して治療の選択肢があることを知っておいてください。転移した臓器の数や場所は、治療方針を決める大切な情報になります。
がんが転移したと告げられたときの考え方や治療の選択は、次の記事でも整理しています。
転移が先に見つかり、腎細胞がんがわかることもある

腎細胞がんは初期の自覚症状が乏しいため、転移した場所の症状や異常が先に見つかり、その原因を詳しく調べた結果、腎臓のがんがわかることも少なくありません。たとえば、咳や血痰で肺の検査を受けたら影が見つかった、骨の痛みで受診したら骨転移とわかった、といったケースです。この場合は最初からステージ4と診断され、本人や家族の衝撃は大きくなりがちです。
それでも、リスク分類に応じた薬物療法や腎臓の摘除、転移巣の治療が検討されます。診断の経緯が突然であるほど、気持ちの整理には時間がかかって当然です。焦らず主治医と相談してください。
手術後も20〜30%に再発がみられ、10年以上たってからのこともある

がんが腎臓にとどまっていて腎臓を摘除した場合でも、その後20〜30%の人に再発がみられるとされています。どのような場合に再発しやすいかを知る方法は、まだ確立していません。
腎細胞がんは治療後10年以上たってから再発することもあるため、定期通院が終わったあとも健康診断や人間ドックを受けることが勧められています。再発した場合の治療は転移のある腎細胞がんと同様に薬物療法が中心で、状況によっては手術も選択肢になります。定期的な画像検査を続けることが、再発の早期発見につながるでしょう。
腎臓がんの検査方法

腎臓がんは、画像検査で見つかり、診断されることが多いがんです。この章では、どの検査で何を調べるのかと、腫瘍マーカーの扱いを整理します。
超音波と造影CTで見つかり、確定診断にはCTが必要

腎細胞がんは多くの場合、腹部超音波(エコー)検査やCT検査で見つかり、確定診断にはCT検査が必要です(出典:「腎臓がん(腎細胞がん) 検査」)。超音波検査では、がんの場所や形、大きさ、周りの臓器との関係を確認します。CT検査では一般に造影剤を使ってがんのある部位の血液の流れを観察し、肺への転移を調べる胸部CTも行います。
血液検査は、全身の状態や腎臓の機能を調べるための検査です。造影剤を使う前には、腎機能やアレルギーの有無を確認します。検査で気になることは、事前に医師や看護師に伝えておきましょう。
MRI・生検・骨シンチグラフィ・PETを行う場合

腎機能の障害やアレルギーで造影剤が使えない場合や、CTや超音波だけでは診断が難しい場合には、MRI検査で大きさや周囲への広がりを調べます。いろいろな画像検査をしてもはっきり診断できない場合に検討するのが、細い針で組織の一部をとる生検です。
骨への転移が疑われる場合は骨シンチグラフィ、再発や転移がほかの画像ではっきりしない場合はPET検査を補助的に行うことがあります。検査の目的を一つずつ確認しておくと、結果の説明も理解しやすくなるでしょう。どの検査を受けるかは、体の状態や症状に応じて担当医が判断します。
腎細胞がんには、診断や効果判定に使える腫瘍マーカーがない

腫瘍マーカーは、がんの診断の補助や治療の効果をみるために使われる血液中の物質です。しかし、腎細胞がんには現在のところ、診断や治療効果の判定に使えるような特定の腫瘍マーカーはありません。そのため、経過は主にCTやMRI、超音波などの画像検査で確認します。
血液検査では、白血球や血小板の数、アルブミン、CRP、LDH、カルシウムなどの値に異常が見られることがあり、これらは全身の状態を判断する材料になります。数値の変化が気になるときは、画像検査の結果とあわせて主治医に説明を求めてください。
腎臓がんの治療方法と費用感

腎臓がんの治療は手術が基本で、手術が難しい場合は薬物療法が中心になります。この章では、公的機関が示す標準治療の役割と、標準治療に統合医療を組み合わせる考え方、費用の面で知っておきたいことを整理します。
手術、腎部分切除術と腎摘除術の違い

Ⅰ期からⅢ期の腎細胞がんに対する標準治療は手術です。主に4cm以下の小さながんでは、がんのある部分だけを切除して腎臓の機能を残す腎部分切除術が選ばれることが増えています。
腎部分切除術が適切でない場合は、がんのある側の腎臓をすべて取り除く腎摘除術を行います。手術の方法は、開腹のほか、腹腔鏡手術やロボット支援手術も選択肢です。
費用は保険診療の対象で、高額療養費制度により自己負担には上限があります。片側の腎臓を摘出しても、残った腎臓が正常に働いていれば、通常は生活に支障はありません。
小さながんには、凍結療法や監視療法という選択肢もある

がんが小さい場合には、体の外から特殊な針を刺し、アルゴンガスでがんを凍らせて死滅させる凍結療法が選ばれることもあります。高齢の方や重い合併症がある方、手術を希望しない方に検討されることがある方法です。
また、がんが小さく腎臓内にとどまっている早期の場合には、すぐに治療をせず、画像検査で定期的に経過を観察する監視療法を選ぶこともあります。手術に危険が伴う方にとって、「すぐに切らない」ことも選択肢の一つです。どちらも、がんの大きさや位置、体の状態をふまえて担当医と話し合って決めます。
薬物療法、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬

薬物療法は、手術でがんを取りきることが難しい場合に行う治療で、主に使うのは分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬です。最初に使う薬は組織型とリスク分類で決め、淡明細胞型では両者を組み合わせることもあります。二次治療以降は、体の状態や前に使った薬に応じて選びます。
がん情報サービスによると、2023年6月時点で腎細胞がんへの効果が証明されている免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬とサイトカイン療法のみです。副作用は薬ごとに異なるため、治療前に確認しておきましょう。通院で治療を受けることも増えています。
放射線治療は、脳や骨への転移の症状緩和が中心

腎細胞がんでは、腎臓にできたがんそのものを根治させる目的で放射線治療を行うことはあまりありません。放射線治療が主に使われるのは脳や骨に転移がある場合で、がんの進行を抑えたり、痛みをやわらげたりする目的で行います。骨への転移による痛みは、生活の質を大きく下げる症状の一つです。
痛みが軽くなれば、歩くことや眠ることが楽になり、薬物療法を続ける体力を保つことにもつながります。転移による症状が出たときに検討できるかを、主治医に聞いておくとよいでしょう。痛みは我慢せず伝えてください。
緩和ケア・支持療法は、診断されたときから受けられる

緩和ケア/支持療法は、がんに伴う心と体、社会的なつらさをやわらげ、がんによる症状や治療の副作用を軽くするための予防・治療・ケアです。緩和ケアは決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります(出典:「緩和ケア」)。つらさを感じるときには、治療と並行していつでも受けることができます。
本人にしかわからない痛みや不安も、遠慮せず積極的に医療者へ伝えることが大切です。痛みには薬の処方、気持ちの落ち込みには心理的なケアなど、つらさに応じた対応があります。
統合医療・自然療法を組み合わせるという選択肢

統合医療は、厚生労働省の検討会で「近代西洋医学を前提として、これに補完代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOLを向上させる医療」と位置づけられています。標準治療をサポートする形で、食事の改善、運動、温熱療法、心のケアなどを組み合わせる考え方です。
補完代替療法の多くは自由診療で、自己負担が増えることがあります。腎臓がんの治療中はほかの薬が腎機能に影響することもあるため、取り入れるものは必ず主治医に伝え、根拠と費用を確認して選んでください。取り入れたものは、体調の変化とあわせて記録しておくと主治医に伝えやすくなります。
当協会は、この定義に基づき、標準治療をサポートする形で信頼性の高い補完代替療法の情報を整理・提供している一般社団法人です。医師や大学教授が理事を務め、特定の商品や治療法を勧めることはありません。協会が紹介している療法の分類は、次のページで確認できます。
手術を控えているとき、手術ができないときの選択肢

「手術までの期間に何かできることはないか」「転移があり、手術が難しいと言われた」。この章では、手術を控えているときにできる準備と、ステージ4で手術が難しいときに残る治療、体を楽にするケア、療養の場所、統合医療の併用を順に整理します。
手術までの期間にできること、体調と持病を整える

手術を控えているときにできることは、決して少なくありません。腎臓の機能を保つためには、高血圧や糖尿病などの持病に注意することが大切です。ほかの医療機関の薬や造影剤には腎臓に影響する可能性があるものがあるため、事前に担当医に相談しましょう。
禁煙や節酒、塩分を控えたバランスのよい食事も、手術前後を通じた体調管理の基本です。医師の指示のもとで体を動かし、筋力を保っておくことも大切とされています。主治医に確認したい質問を書き出しておくことも、手術前にできる大切な準備です。
主治医に確認しておきたい質問と、セカンドオピニオン

手術や治療の前に整理しておきたいのは、提案された術式とその理由、残る腎臓の機能の見通し、凍結療法や監視療法といった手術以外の選択肢、転移がある場合のリスク分類と薬の選び方、副作用と対処法、決めるまでにどれくらい時間があるか、といった点です。担当医の意見を別の角度から検討したいときには、セカンドオピニオンを聞くこともできます。
紹介状をもらって受けるのが一般的で、主治医に失礼なことではありません。質問を紙に書いて診察に持っていくだけでも、聞き漏らしが減り、納得して選びやすくなります。
ステージ4で手術が難しいときの、薬物療法と転移巣の治療

ステージ4の腎細胞がんでは、まずリスク分類を用いて治療方針を考えます。遠隔転移がある場合も、状況によっては腎臓を摘除し、そのうえで転移巣の手術、薬物療法、放射線治療を組み合わせます。腎臓の摘除が難しい場合でも、治療の中心になるのは分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法です。
手術の前に分子標的薬でがんを小さくすることもあります。「手術ができない」は治療の終わりではありません。いま検討できる薬と転移巣への治療を、主治医に具体的に聞いてみてください。
ステージ4と告げられ、「これからの治療を一人で決めなければ」と焦っていた60代の男性は、当協会の相談で急かされずに話を聞いてもらい、選択肢の整理と主治医に確認すべきことを一緒に考えたことで、納得して治療に向き合えたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。
骨や脳への転移の痛みをやわらげる緩和ケア

進行した腎臓がんで生活の質を大きく左右するのが、骨転移による痛み、脳転移による頭痛やまひ、全身の倦怠感や体重減少といった症状です。これらには、痛みをとる薬、骨や脳の転移に対する放射線治療、心のつらさへのケアなど、体と心を楽にするための治療とケアが用意されています。
「痛み止めは最後の手段」と考えて我慢してしまう人もいますが、つらさを減らすことは食事や睡眠を保ち、体力を保つことにもつながります。症状が出たら遠慮せず医療者に伝えてください。緩和ケアは治療と並行して受けられます。
在宅緩和ケアと緩和ケア病棟(ホスピス)から、療養の場所を選ぶ

療養の場所は、自宅での在宅緩和ケア、緩和ケア病棟(ホスピス)、一般病棟から選ぶことができます。在宅緩和ケアは、訪問診療や訪問看護、介護サービスを組み合わせ、住み慣れた家で過ごしながら症状に対応してもらう方法です。
緩和ケア病棟は医療者が常にそばにいるため、症状が強いときや自宅での介護が難しいときの安心感が大きくなります。本人の希望と家族の介護の負担を合わせて考え、地域の情報はがん相談支援センターでも相談できます。
見学や相談を早めに始めておくと、いざというときに選びやすくなるでしょう。緩和ケアやホスピスをすすめられたときの対処法と検討すべきことは、次の記事で詳しく整理しています。
標準治療に統合医療を組み合わせて取り組む

手術を控えている方も、薬物療法を続けている方も、食事の改善や運動、温熱療法、心のケアといった補完代替療法を組み合わせて取り組むことができます。当協会への相談でも、「手術までの期間に取り組めることはないか」という問いは多く寄せられます。
大切なのは、標準治療をやめて置き換えるのではなく、主治医に伝えたうえで並行して取り組むこと、効果の根拠と費用を確認すること、体調に合わせて無理をしないことです。何を組み合わせるか迷うときは、公的機関の情報をもとに一緒に整理する相談先を持っておくと、情報に振り回されずに済みます。
当協会に寄せられた腎臓がんの相談事例と無料相談

一般社団法人日本がん難病サポート協会には、腎臓がんで手術を控えている方からのご相談も寄せられています。この章では、実際の相談事例と、無料相談で一緒に整理できることをご紹介します。
手術を控えたステージ3の67歳女性の相談事例

当協会に相談された67歳の女性は、腎臓と尿管にがんがあるステージ3の腎臓がんと診断され、手術を予定していました。ご相談は「標準治療とは別に、手術するまでの期間で取り組める有効な療法はないか」というものでした。
相談を通じて選択肢を整理し、自然療法を中心に取り組まれ、手術も無事に成功し、合併症もなく順調に回復されています。これは当協会に寄せられた個人の相談事例であり、同じ経過をたどることを保証するものではありません。手術を待つ期間にも、主治医と相談しながら取り組めることがあるという一例です。
ご家族だけの相談、匿名・オンラインでも相談できる

当協会の個別相談は無料で、電話(平日9時〜18時)、メール(365日24時間受付)、オンラインや対面に対応しています。匿名でも可能で、ご本人が同席されないご家族だけのご相談も歓迎しています。
診断されたばかりの方、手術を控えている方、ステージ4で治療を続けている方まで、どの段階の方も対象です。当協会は医療機関ではなく、診断や治療は行いません。
公的機関の情報をもとに考え方を整理し、主治医との対話を後押しすることが役割です。「何から考えればいいかわからない」という状態のままで構いません。
父の治療のことでご家族だけで相談された40代の男性からは、「家の中では出せない気持ちを第三者に話せるだけで、こんなに軽くなるものかと思いました」という声が届いています(当協会「ご相談者の声」より)。同じ立場の方の声は、次のページでも紹介しています。
無料相談で一緒に整理できること

無料相談では、手術までの期間の過ごし方、提示されている治療の選択肢の整理、次の診察で主治医に確認したい質問の書き出し、緩和ケアや在宅療養の考え方、ご家族との関わり方などをお話しいただけます。統合医療や補完代替療法について気になる情報があれば、公的機関の情報をもとに見極め方を一緒に考えます。
特定の商品や治療法の勧誘は行っていません。一人で決めなければと焦る前に、まずは一度お話しください。診断直後にご相談いただいた方からは、「主治医に質問すべきことが整理でき、次の診察が少し怖くなくなった」という声も届いています。
【まとめ】 腎臓がんはステージ4でも、手術前でも、選択肢を整理すれば今できることが見えてくる

腎臓がんは初期に症状が出にくく、多くは健診やほかの検査で偶然見つかりますが、肺や骨への転移が先に見つかることもあります。全国がん登録の2018年診断例では、腎・尿路(膀胱除く)のがんの5年相対生存率は全体で70.3%、遠隔転移では15.3%ですが、これは過去の集団の平均であり、個人の見通しはリスク分類や治療への反応で変わります。
手術を控えている段階では持病や体調を整え、ステージ4で手術が難しくても薬物療法や転移巣の治療、緩和ケアを続けることが可能です。標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせる道もあります。まずは主治医に確認したいことを整理するところから始めてみてください。
手術前でもステージ4でも、まずは無料相談でお話しください

手術を控えて「それまでに何ができるのか」と考えている、転移があると言われて気持ちの整理がつかない、ご家族としてどう支えればいいかわからない。当協会には、どの段階の方からもご相談が寄せられています。公的機関の情報をもとに、選択肢と主治医に確認したいことを一緒に整理し、主治医との対話を後押しします。
お電話でのご相談は 03-5657-0995(平日9時〜18時)。メールでのご相談は365日24時間受け付けています。ご家族だけのご相談も可能です。
ほかの部位の相談事例は「がんの部位別事例一覧」でも紹介しています。
よくある質問

腎臓がんのステージ4は末期ですか?

医学的に「末期」という区分はありません。腎臓がんのステージ4は、がんが腎臓をおおうゲロタ筋膜を越えて広がっているか、肺や骨など離れた臓器に転移がある状態を指します。ステージ4でも分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法の対象になる人は多く、「ステージ4=何もできない」ではありません。
詳しくは ステージ4・末期がどの状態か を参照してください。
腎臓がんステージ4の5年生存率はどのくらいですか?

全国がん登録の2018年診断例では、腎・尿路(膀胱除く)のがんの5年相対生存率は全体で70.3%、離れた臓器に転移した「遠隔」では15.3%です。ただし腎盂がんなどを含む集計で、登録の区分はステージと完全には一致しません。過去の診断例の数値であり、個人の経過はリスク分類や治療への反応で変わります。
詳しくは 進行度別の5年相対生存率 を参照してください。
腎臓がんステージ4の余命はどのくらいですか?

余命を一律に示す公的な数値はありません。転移のある腎細胞がんでは、MSKCC分類やIMDC分類で低・中・高リスクに分けて見通しを予測し、薬の選び方にも使います。医師が告げる余命は統計上の目安であって期限ではありません。自分のリスク分類と、それに応じた治療の見通しを主治医に確認してください。
詳しくは 転移がある場合のリスク分類 を参照してください。
腎臓がんはどこに転移しやすいですか?

最も転移しやすいのは肺です。そのほか骨、肝臓、副腎、脳などに転移することもあります。肺では咳や血痰、骨では痛みや骨折、脳では頭痛や片側のまひといった症状が出ることがあり、転移先の症状がきっかけで腎臓がんが見つかることも少なくありません。転移の有無は、胸部CTや骨シンチグラフィなどで調べます。
詳しくは 転移しやすい部位 を参照してください。
腎臓がんで手術を控えています。手術までにできることはありますか?

あります。腎臓の機能を保つため高血圧や糖尿病などの持病に注意し、ほかの医療機関の薬や造影剤を使うときは事前に担当医に相談します。禁煙や節酒、塩分を控えた食事、医師の指示のもとでの運動も体調管理の基本です。気になる療法を取り入れる場合も、必ず主治医に伝えたうえで並行して取り組んでください。
詳しくは 手術までの期間にできること を参照してください。
腎臓を1つ取っても、普通に生活できますか?

片側の腎臓を摘出して1つになっても、残った腎臓が正常に働いていれば、通常は生活に支障はありません。ただし残った腎臓の機能を守るため、高血圧や糖尿病に注意し、塩分をとりすぎず水分をしっかりとりましょう。ほかの病院で薬や造影剤を使うときは、事前に担当医に相談しましょう。
詳しくは 腎部分切除術と腎摘除術の違い を参照してください。
腎臓がんは手術後に再発しますか?

がんが腎臓にとどまっていて腎臓を摘除した場合でも、その後20〜30%の人に再発がみられるとされています。腎細胞がんは10年以上たってから再発することもあるため、定期通院が終わったあとも健康診断や人間ドックを受けることが勧められています。再発した場合は薬物療法が治療の中心です。
詳しくは 手術後の再発の特徴 を参照してください。
ステージ4でも、元気に過ごしている人はいますか?

支持療法の進歩で副作用を予防・緩和できるようになり、通院での薬物療法が増えています。仕事や家事など今までの日常生活を続けながら治療を受けることも可能です。ただし体調には波があるため無理をせず、つらさは緩和ケアでやわらげながら過ごすことが大切です。気になることは主治医に相談しましょう。
詳しくは 薬物療法の考え方 を参照してください。
家族が腎臓がんステージ4と言われたら、家族にできることは何ですか?

まず本人の気持ちと希望を聞き、主治医の説明に同席して治療の目的や見通しを一緒に確認することです。症状の変化を医療者に伝えることや、療養の場所を一緒に考えることも家族の大切な役割です。家族自身の不安も一人で抱えず、がん相談支援センターや当協会の無料相談で話してください。ご家族だけのご相談もできます。
詳しくは 無料相談で整理できること を参照してください。
出典
本記事の医学的な事実と統計は、次の公的機関の一次情報に基づいています(2026年10月閲覧)。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)」
- 腎臓がん(腎細胞がん)について(腎臓の構造・種類・症状・転移しやすい部位)
- 検査
- 治療(ステージ分類・組織型・リスク分類・手術・凍結療法・薬物療法・免疫療法・放射線治療・監視療法・緩和ケア・再発した場合の治療)
- 療養(経過観察・手術後の生活・食事・他院の薬・持病)
- 予防・検診(危険因子・検診)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」
- 腎・尿路(膀胱除く)(診断数2023年、死亡数2024年、5年相対生存率2018年診断例)
- 全国がん登録生存率データ cancer_survivalNCR(2016-2018).xlsx(最新データ〈進行度別〉シート、腎・尿路〈膀胱除く〉 C64-C66, C68)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
- 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会による統合医療の位置づけ(厚生労働省 eJIM、統合医療に関する日本の見解と意向)
| 本記事で示した数値 | 出典 |
|---|---|
| 診断数 30,845例(2023年)、死亡数 10,325人(2024年)※腎・尿路(膀胱除く) | がん統計「腎・尿路(膀胱除く)」 |
| 5年相対生存率 全体70.3%、限局93.5%、領域60.2%、遠隔15.3%(2018年診断例) | 全国がん登録生存率データ(最新データ〈進行度別〉) |
| 診断時の進行度の割合 限局55.7%、領域19.4%、遠隔14.4%(2018年診断例) | 同上 |
| ステージ分類の基準(直径7cm、ゲロタ筋膜など) | 腎臓がん(腎細胞がん) 治療 表1・表2 |
| 淡明細胞型が7〜8割、組織型14種類 | 腎臓がん(腎細胞がん) 治療 |
| 摘除後の再発 20〜30% | 腎臓がん(腎細胞がん) 治療 「再発した場合の治療」 |
| 部分切除術の目安 4cm以下 | 腎臓がん(腎細胞がん) 治療 「手術」 |

