この記事でわかること

食道がんは手術ができないと言われても、ⅣA期は化学放射線療法、ⅣB期は薬物療法が行われ、食事のつかえや痛みを和らげる治療もあります。余命・症状・選択肢を公的機関の情報で確認できます。
- 食道がんの「末期」「ステージ4(ⅣA期・ⅣB期)」がどの状態を指すのか
- 喫煙・飲酒などの原因と、初期症状・進行したときの症状
- 全国がん登録の進行度別5年生存率と、余命の数字の読み方
- 内視鏡的切除・手術・化学放射線療法・薬物療法など治療の選択肢
- 手術ができない理由と、食事のつかえ・痛みへの対処、療養の場所
- 当協会に寄せられた食道がんの相談事例と、無料相談で整理できること
食道がんは末期・ステージ4と言われても、できることがある

「食道がんで手術ができないと言われた」「末期と告げられ、余命が気になって眠れない」。この章では、食道がんの末期やステージ4がどの状態を指すのかを公的機関の情報で整理し、この記事で扱う範囲を示します。手術ができない段階でも、治療とケアの選択肢は残っています。
食道がんの「末期」「ステージ4」とは、どの状態を指すのか

食道がんのステージ4は、ⅣA期とⅣB期に分かれます。ステージ4と告げられた方が最初に知っておきたいのは、この2つの違いでしょう。がんが肺や大動脈、気管など食道の周りの臓器にまで明らかに広がった状態がⅣA期、離れた臓器や遠くのリンパ節に転移した状態がⅣB期です(出典:「食道がん 治療」)。
医学的に「末期」という区分はありません。ⅣA期では化学放射線療法、ⅣB期では薬物療法が標準治療とされ、「ステージ4=何もできない」ではないのです。まずは自分のステージを確認しましょう。
この記事でわかる範囲と、情報の時点

この記事では、食道がんの原因から症状、種類、ステージ別の5年生存率、検査、治療法、そして手術ができない・末期と言われたときの選択肢までを、一覧で把握できるようにまとめました。医学的な事実は国立がん研究センターがん情報サービスの「食道がん」と全国がん登録のデータを根拠にし、当協会の立場からの情報とは分けて書いています。
生存率は過去の診断例の数値です。これから治療を受ける人にそのまま当てはまるとは限りません。ステージの考え方は、日本食道学会の分類に沿って説明します。目安として読んでください。
手術ができないと言われても、選択肢の整理はこれから始められる

「手術はできません」と告げられると、もう治療の手立てがないように感じてしまう方は少なくありません。しかし食道がんには、放射線治療と抗がん薬を組み合わせる化学放射線療法や、免疫チェックポイント阻害薬を使った薬物療法があります。
食べ物のつかえを和らげるステントや、痛みを抑える放射線治療も選択肢の一つ。標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせるという考え方もあります。大切なのは、選択肢を整理して主治医に確認することです。当協会では、その整理を無料でお手伝いしています。
食道がんの原因と、なりやすい人の特徴

食道がんは、生活習慣との関わりが深いがんです。この章では、わかっている発生要因と、予防や検診の現状を整理します。
喫煙と飲酒が、食道がんの主な発生要因

食道がんが発生する主な要因は、喫煙と飲酒です(出典:「食道がん 予防・検診」)。特に扁平上皮がんは、この2つとの関連が強いことがわかっています。両方の習慣がある人は、危険性がより高まるとの指摘も。
飲酒で体内に生じるアセトアルデヒドは、発がん性のある物質です。これを分解する酵素の働きが生まれつき弱い人は、食道がんの危険性が高まると報告されています。熱いものを飲んだり食べたりする習慣についても、危険性を高めるという報告が少なくありません。思い当たる習慣がある方は、早めに見直しておきましょう。
予防は禁煙と節酒、指針で定められた検診はない

食道がんを予防するには、禁煙し、飲酒をひかえることが基本になります。特に大量に飲酒している人は、お酒をひかえることで発生の予防が期待できるとされています。野菜や果物を積極的に食べると、食道がんができにくくなるという報告もあるほどです。
一方、食道がんには、国の指針で定められた検診がありません。胃がん検診のバリウム検査は胃を重点に調べるため、胸の違和感やつかえがあれば、検査の前に伝えて食道も確認してもらいましょう。気になる症状があるときは、早めに受診してください。
食道がんの初期症状と、進行したときの症状

食道がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどです。この章では、早く気づくためのサインと、進行したときにあらわれる症状を整理します。
初期は自覚症状がほとんどなく、胸の違和感がサインになる

食道がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどです(出典:「食道がんについて」)。早期発見のために注意しておきたいのが、飲食時の胸の違和感。飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛む、熱いものがしみる感じがするといった症状です。
こうした症状は、一時的に消えることもあります。「治ったから大丈夫」と考えて様子を見てしまう方もいますが、消えたからといって安心はできません。違和感が続くときや繰り返すときは、内科や消化器内科を受診しましょう。受診の目安に迷うときは、かかりつけ医に相談するのも一つの方法です。
進行すると現れる、食べ物のつかえと体重減少

食べ物のつかえは、進行した食道がんで多くみられる症状です。がんが大きくなって食道の内側が狭くなると、飲食物がつかえやすくなります。次第に、軟らかい食べ物しか通らなくなるのが特徴です。
さらに進むと、がんが食道をふさいで水も通らなくなり、唾液も飲み込めずに戻すようになります。つかえによって食事の量が減れば、体重も減っていきます。食べにくさは体力に直結する問題。早めに担当医へ伝え、食事の形や栄養のとり方を相談してください。体重の変化も、あわせて記録しておくと役立ちます。
胸や背中の痛み、咳、声のかすれが出ることもある

がんが食道の壁を越えて、周囲にある肺や背骨、大動脈などに広がると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。気管や気管支が圧迫されたり、がんが及んだりした場合には、その刺激で咳が出ることも。
声帯を調節する神経にがんが広がると、声がかすれます。ただし、これらの症状は肺や心臓、のどの病気でも起こるものです。思い当たる症状があるときは、肺や心臓だけでなく食道の検査も受けるようにしましょう。受診先は、内科や消化器内科で構いません。原因がわかれば、対処の方法も見えてきます。
食道がんの種類と性質

食道がんは、がんの種類(組織型)やできる場所によって性質が異なります。この章では、組織型と発生しやすい場所、あわせて注意したい重複がんを整理します。
扁平上皮がんが約9割、腺がんは7%程度

食道がんの組織型は、扁平上皮がんというタイプが90%弱を占めます。腺がんというタイプは7%程度で、まれにこの2つ以外の組織型のこともあります。2023年に診断されたのは25,889例で、その約8割が男性でした。
扁平上皮がんは、喫煙や飲酒との関連が強いタイプです。また、扁平上皮がんと腺がんでは、進行度(ステージ)の分類が異なります。食道と胃のつなぎ目にできる腺がんは、胃がんの分類に従って進行度を判断するのが決まり。自分の組織型は、病理検査の結果で確かめておきましょう。
食道の中央付近にできやすく、同時にいくつもできることもある

食道は、のどと胃をつなぐ管状の臓器で、気管や心臓、大動脈、肺、背骨に囲まれています。食道がんは、その内側をおおう粘膜の表面から発生するがん。食道のどこにでもできますが、約半数は食道の中央付近です。
食道の中に、いくつも同時にできる場合もあります。がんが小さいうちは、内視鏡検査でなければ見つからないことも少なくありません。粘膜内にとどまるものは早期食道がん、粘膜下層までのものは食道表在がんと呼ばれ、治療の選び方が変わってきます。がんの場所と深さを、検査の結果で確認してください。
胃がんや頭頸部がんなど、重複がんにも注意が必要

同時に、または別の時期に、複数の臓器にがんが発生することを重複がんといいます。食道がんでは、約20%に重複がんが発生するといわれており、決して珍しいことではありません。
多いのは、胃がん、咽頭がんや喉頭がんなどの頭頸部がん、大腸がん、肺がんです。そのため、食道がんが疑われたときや治療後の経過観察では、重複がんがないかどうかもあわせて調べます。検査の範囲が広く感じられても、見落としを防ぐための大切な確認。目的を知っておくと、受ける側の負担も軽くなるでしょう。気になる点は、遠慮なく質問してください。
ステージ別の状態と、5年生存率・余命の目安

「ステージ4と言われたけれど、あとどのくらい生きられるのか」。この章では、ステージの分類と、全国がん登録の進行度別5年生存率、数字の読み方を整理します。
0期〜ⅣB期の分類と、ⅣA期・ⅣB期の違い

| ステージ | 主な状態(扁平上皮がんの臨床的進行度分類。日本食道学会) |
|---|---|
| 0期・Ⅰ期 | がんが粘膜(0期)や粘膜下層(Ⅰ期)にとどまり、リンパ節転移がない |
| Ⅱ期・Ⅲ期 | がんが固有筋層や外膜まで広がる、または食道の近くのリンパ節などに転移がある |
| ⅣA期 | がんが肺・大動脈・気管など周囲の臓器にまで明らかに広がっている |
| ⅣB期 | 食道から離れた臓器や、遠くのリンパ節に転移がある |
食道がんのステージは、がんの深さ(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の組み合わせで決まり、0期からⅣB期まであります。数字が大きいほど、進行した状態です。
ⅣA期は、がんが肺や大動脈、気管など周囲の臓器にまで明らかに広がった状態を指します。ⅣB期は、食道から離れた臓器や遠くのリンパ節に転移がある状態。同じステージ4でも、標準治療は異なります。
なお、この表は扁平上皮がんの分類です。国際的な分類が使われることもあるため、どの分類での説明かを主治医に確かめておくと安心でしょう。
全国がん登録にみる、食道がんの5年相対生存率

| 進行度(2018年診断例) | 5年相対生存率 | 診断時の割合 |
|---|---|---|
| 限局(食道にとどまる) | 83.3% | 38.3% |
| 領域(近くのリンパ節や周りの組織に広がる) | 35.5% | 36.7% |
| 遠隔(離れた臓器に転移) | 10.9% | 18.6% |
| 全体 | 48.8% | ― |
全国がん登録では、2018年に診断された食道がん全体の5年相対生存率は48.8%です(出典:「がん統計 食道」)。進行度別にみると、がんが食道にとどまる「限局」が83.3%、近くのリンパ節や周りの組織に広がった「領域」が35.5%、離れた臓器に転移した「遠隔」が10.9%でした。
診断時の割合は、限局38.3%、領域36.7%、遠隔18.6%。早い段階で見つかるほど数字は高く、進行すると厳しくなるのが食道がんの現実です。ただし、これはステージではなく、がんの広がりで分けた「進行度」の数値である点に注意してください。
生存率の数字の読み方と、余命が数字どおりにならない理由

5年相対生存率は、あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標の一つです。過去に診断された人の集団の数値であり、その後に使えるようになった薬の効果は十分に反映されていません。あくまで集団の平均であり、一人ひとりの経過を示すものではないのです。
食道がんでは、免疫チェックポイント阻害薬が治療に加わるなど、選択肢が広がってきました。余命は、ステージだけでなく、年齢や体の状態、治療の効き方でも変わります。数字だけで将来を決めつけないでください。見通しは、主治医に確かめるのが確実です。
進行の仕方と、転移・再発の特徴

食道がんは、周りの臓器に広がりやすく、リンパ節や離れた臓器にも転移することがあります。この章では、広がり方と、再発に気づくための経過観察、再発したときの治療を整理します。
周囲の臓器に広がりやすく、リンパ節・肺・肝臓・骨に転移する

食道の粘膜から発生したがんは、大きくなると食道の外側へ広がっていきます。食道の壁を越えると、気管や大動脈など周りの臓器にまで直接広がることも。これを浸潤と呼びます。周囲への広がりの程度は、治療方針を決める大きな材料です。
また、食道の壁の中にあるリンパ管や血管にがんが入り込むと、リンパ液や血液の流れに乗って、リンパ節や肺、肝臓などの臓器へ移っていきます。これが転移です。転移があっても、治療の選択肢がなくなるわけではありません。気になる症状は、早めに主治医へ伝えてください。
再発は治療後2年以内に多く、症状があればすぐ受診する

食道がんの根治切除後は、定期的に通院して検査を受けます(出典:「食道がん 療養」)。目的は、再発の早期発見、体の状態や生活の質の確認、そして多発がんや重複がんの早期発見の3つです。治療が終わったあとも、通院は大切な治療の一部といえます。
診察や検査の頻度は、進行度や受けた治療によって異なりますが、おおよそ年1〜4回程度。手術後に再発する場合は2年以内のことが多いものの、それ以降に起こることもあります。首の腫れや声のかすれ、痛み、息苦しさ、血痰などがあれば、すぐに受診してください。
再発したときの治療は、場所と体の状態で決まる

食道がんの再発のほとんどは、リンパ節と、肺・肝臓などの臓器、骨への転移です。再発に対する治療は、再発した場所、そのときの体の状態、初回に受けた治療とその効果を考えて決めます。
多くは延命や症状の緩和を目指す治療になりますが、限られた範囲のリンパ節転移や、一つの臓器の少数の転移では、治癒を目指した手術や化学放射線療法を行うことも。骨や脳への転移には、症状を和らげる放射線治療が行われます。薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせます。次の治療を、主治医と一緒に考えていきましょう。
再発を告げられたときの治療の選択については、次の記事も参考にしてください。
食道がんの検査方法

食道がんの検査は、がんかどうかを確定する検査と、進行度を調べる検査の2段階です。この章では、それぞれの検査でわかることを整理します。
内視鏡検査と生検で、がんかどうかを確定する

食道がんが疑われたときは、まず上部消化管内視鏡検査を受けます(出典:「食道がん 検査」)。食道の粘膜の色や凹凸を直接観察し、異常な部分の組織を採って顕微鏡で調べる検査です。
この病理検査で、がんかどうか、どの種類のがんかが確定します。バリウムなどの造影剤を飲んでX線で撮影する上部消化管造影検査も、確定のための検査の一つ。ただ、症状のない初期のがんを見つけやすいのは内視鏡のほうです。検査への不安は、事前に伝えておいてかまいません。結果が出るまでの期間も、あわせて聞いておきましょう。
CT・MRI・PETなどで、進行度を調べる

がんと確定したら、治療方針を決めるために進行度を調べます。CT検査やMRI検査では、周りの臓器への広がりや、リンパ節・肺・肝臓などへの転移の有無を確認。進行度を判定するうえで、最も重要な検査とされています。
超音波内視鏡検査は、がんがどのくらい深く広がっているか、食道の外側のリンパ節に転移していないかを詳しく調べる検査です。全身の転移を調べるために、PET検査を行う場合もあります。首や腹部は、体の表面から超音波をあてて調べます。どの検査で何を調べるのか、主治医に尋ねてみてください。
腫瘍マーカーは、診断を補う検査として使う

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、治療の効果をみる目的で行う血液検査です。食道がんの扁平上皮がんではSCCとCEA、腺がんではCEAを測定します。
ただし、腫瘍マーカーの値だけでは、がんの有無や進行しているかどうかは確定できません。がんがあっても、値が高くならないこともあるためです。数値が上下しても、一喜一憂しすぎないでください。
画像検査などの結果と合わせて、医師が総合的に判断します。検査結果の説明では、前回からの変化とあわせて、画像でどう見えているかも聞いておくと理解が深まるでしょう。
食道がんの治療方法と費用感

食道がんの治療には、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法、化学放射線療法があります。この章では、ステージごとの選び方とそれぞれの治療、費用、標準治療に統合医療を組み合わせる考え方を整理します。
ステージごとの標準治療の選び方

治療は、ステージに応じた標準治療を基本に、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態を総合して決めていきます。粘膜にとどまる0期では、食道を残せる内視鏡的切除が標準治療。Ⅰ期では、手術または化学放射線療法のいずれかを行います。
Ⅱ期・Ⅲ期は、手術ができる体の状態なら手術が第一選択です。その場合は、先に抗がん薬による化学療法を行ってから手術をする方法が標準とされています。ⅣA期は化学放射線療法、ⅣB期は薬物療法が中心になります。自分がどのステージにあたるかで、提案される治療は大きく変わるのです。
内視鏡的切除と手術

内視鏡的切除は、内視鏡を使って食道の内側からがんを切り取る方法です。対象は、リンパ節転移のない0期の早期食道がんのうち、一定の大きさまでのもの。切除した組織を調べ、がんが残っている可能性があれば、追加で手術や化学放射線療法を行います。
手術では、がんを含めた食道と胃の一部を切除し、周囲のリンパ節も取り除きます。あわせて、胃や腸を使って食べ物の新しい通り道をつくる再建手術も必要です。合併症には、縫合不全、肺炎、声のかすれなどがあります。声のかすれは、多くの場合3〜6カ月程度で回復するとされています。
放射線治療と化学放射線療法

放射線治療には、がんを治すことを目的にした根治照射と、症状を抑えるための緩和照射があります。食道や胃、声帯の機能を残せるのが特徴です。通常は、週5日、6週間などの日程で連日照射します。照射の範囲や回数は、がんの状態に合わせて決めるものです。
放射線治療だけで行うより、抗がん薬と同時に行う化学放射線療法のほうが効果的とされています。内視鏡的切除が難しい0期からⅣA期のがんに対して、根治を目指して行われる治療です。照射中は食道の炎症による痛みやつかえ感が出ることもあるため、食事の工夫を看護師に相談してみましょう。
薬物療法、細胞障害性抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬

食道がんの薬物療法で使う薬は、細胞障害性抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬の2種類です。前者はがん細胞が増える仕組みを邪魔する薬、後者は免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬。がんや体の状態に応じて、単独で、または組み合わせて使います。
副作用には、だるさ、吐き気、食欲不振、口内炎、白血球の減少などがあります。吐き気や嘔吐は、以前より和らげられるようになってきました。免疫チェックポイント阻害薬には特有の副作用が起こりやすいとされるため、注意したい症状を治療前に確かめておいてください。
治療費は保険診療が基本、高額療養費制度で自己負担に上限がある

食道がんの内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法などの標準治療は、保険診療で受けられます。医療費が一定額以上になった場合は、高額療養費制度を利用して、自己負担限度額までの支払いとすることが可能です。
一方、がん情報サービスは、食道がんの免疫療法で効果が証明されているのは免疫チェックポイント阻害薬を使う薬物療法のみで、そのほかの免疫療法で効果が証明されたものはないとしています。自由診療を検討するときは、効果の根拠と費用を確かめてください。費用の不安は、病院のソーシャルワーカーやがん相談支援センターにも相談できます。
統合医療・自然療法を組み合わせるという選択肢

統合医療は、厚生労働省の検討会で「近代西洋医学を前提として、これに補完代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOLを向上させる医療」と位置づけられています。標準治療をサポートする形で、食事の改善、運動、温熱療法、心のケアなどを組み合わせる考え方です。
補完代替療法の多くは自由診療で、自己負担が増えることも少なくありません。食道がんでは食事がとりにくくなるため、栄養や体力を保つ工夫を取り入れる方もいます。取り入れるものは必ず主治医に伝え、根拠と費用を確認して選んでください。
当協会は、この定義に基づき、標準治療をサポートする形で信頼性の高い補完代替療法の情報を整理・提供している一般社団法人です。医師や大学教授が理事を務め、特定の商品や治療法を勧めることはありません。協会が紹介している療法の分類は、次のページで確認できます。
手術ができない・末期と言われたときの選択肢

「食道がんで手術ができないと言われた。これからどうすればよいのか」。この章では、その問いに沿って、手術ができない理由、ステージ4の治療、食事や痛みへの対処、療養の場所、主治医への確認事項を順に整理します。
手術ができないと言われる主な理由

食道がんで手術ができないと判断される理由は、主に3つです。周りの臓器(肺・大動脈・気管など)にがんが広がっている場合、離れた臓器に転移している場合、そして年齢や持病から体が手術に耐えられないと考えられる場合。
食道がんの手術は体への負担が大きく、合併症が命に関わる確率は2〜3%とされています。高齢の方や、ほかの臓器に障害がある方では起きやすいことも知られています。「できない」と言われた理由を知ることが、次の一歩の出発点。遠慮せず、主治医に尋ねてください。理由がわかると、次に選べる治療も見えてきます。
ⅣA期は化学放射線療法、ⅣB期は薬物療法が治療の中心

がんが周りの臓器に広がったⅣA期では、化学放射線療法が標準治療として推奨されています。離れた臓器に転移したⅣB期の標準治療は薬物療法で、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせるのが基本です。
薬物療法は、一次治療から始め、効果が弱まったときや副作用が強いときに、二次、三次と続けていきます。体の状態や臓器の機能、食べ物の通り具合なども、治療ができるかどうかの判断材料。全国がん登録でみた遠隔転移がある食道がんの5年相対生存率は10.9%と厳しい数字ですが、治療を続けながら過ごしている人もいます。
余命1年と告げられ、諦めるしかないと思っていた60代の男性は、当協会の相談で「この状況でもまだやれることがたくさんある」と助言を受け、専門家に最後まで継続的に支えてもらえたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。余命を告げられたときの考え方や選択肢は、次の記事にもまとめました。
食べ物が通りにくいときの、ステント・バイパス手術・胃ろう

食道が狭くなって食べ物が通りにくく、完治を目指す治療も難しい場合には、食べられるようにするための処置を行います。その一つが、金属の網でできた筒状の器具を入れて狭い部分を広げる食道ステントです。入院の期間や食事を再開する時期は、方法によって異なります。
胃や腸を使って新しい通り道をつくる食道バイパス手術という方法もあります。栄養を補うために、おなかの皮膚から胃へ管を通す胃ろうをつくることも。口から食べることにこだわりすぎず、体力を保つ方法を主治医と相談しましょう。食べられる安心は、治療を続ける力にもなります。
痛みや咳、息苦しさをやわらげる治療

がんが広い範囲に広がって手術や根治照射ができない場合でも、痛みやつかえなどの症状を和らげる目的で放射線をあてることがあります。これが緩和照射で、根治を目指す照射より短い期間で行うのが一般的です。
がんが気管を圧迫して息苦しいときは、気管用のステントで空気の通り道を確保します。食道と気管がつながってしまった場合には、膜でおおわれたステントで穴をふさぐ方法も。骨に転移したときの痛みにも、放射線治療が使われます。つらさは我慢するものではありません。早めに伝えてください。
食事の工夫と、誤嚥を防ぐリハビリテーション

治療のあとは、食道が狭くなって食事がつかえたり、飲み込む力が落ちて誤嚥しやすくなったりします。軟らかく煮たものやツルツルしたものを選び、パサパサした食べ物は避けるのがお勧めです。水分は最も誤嚥しやすいため、とろみをつけるとよいでしょう。
顎を引いて飲み込む、一口の量を少なくしてゆっくりかむ、食後は体を起こしておくといった嚥下リハビリテーションも役立ちます。食欲がないときは、無理に食べる必要はありません。ご家族も、食べ物を勧めすぎないように見守ってください。食べやすい形を、栄養士に相談するのもよい方法です。
在宅緩和ケアと緩和ケア病棟(ホスピス)から、療養の場所を選ぶ

緩和ケアは、がんと診断されたときから始まり、治療とともにいつでも受けられます(出典:「緩和ケア」)。食道がんでは、診断の時点から飲み込みにくさや栄養の問題で生活の質が下がっていることが多く、治療の初期から取り入れることが重要とされています。
受ける場は、通院、入院、在宅療養の3つ。緩和ケア病棟は、できる限り普段に近い暮らしができるように作られた病棟で、つらさが和らげば自宅に戻ることも可能です。入院を待つ人がいる場合もあるため、早めに担当医へ相談しましょう。本人の希望と家族の負担を、合わせて考えていきます。
緩和ケアの話が出て目の前が真っ暗になったという70代の男性も、「緩和ケアはつらさを和らげながら自分らしく過ごすための医療」という考え方を知って誤解が解けたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。緩和ケアやホスピスをすすめられたときに検討したいことは、次の記事をご覧ください。
主治医に確認しておきたい質問と、セカンドオピニオン

確認しておきたいのは、ステージ(ⅣA期かⅣB期か)、手術ができない理由、提案されている治療の目的と見通し、副作用と生活への影響、食事がとれなくなったときの対処、臨床試験を受けられるか、といった点です。納得して治療を選ぶための、大切な準備になります。
質問は紙に書いて持参すると、聞き漏らしを防げます。ご家族が同席すれば、あとで内容を確かめ合えるでしょう。担当医の意見を別の角度から聞きたいときは、セカンドオピニオンを受けてもかまいません。主治医に失礼なことではないので、遠慮なく申し出てください。
当協会に寄せられた食道がんの相談事例と無料相談

一般社団法人日本がん難病サポート協会には、食道がんで手術ができないと言われた方からのご相談も寄せられています。この章では、実際の相談事例と、無料相談で一緒に整理できることをご紹介します。
手術ができず化学療法と放射線治療を予定していた、55歳女性の相談事例

当協会に相談された55歳の女性は、ステージ4の食道がん(扁平上皮がん、17cm)と診断され、手術ができない状態でした。化学療法と放射線治療を予定されていた方です。
相談を通じて選択肢を整理し、自然療法をメインに取り組まれた結果、6カ月が経過したころに腫瘍が不明瞭になったと伺っています。これは当協会に寄せられた個人の相談事例であり、同じ経過をたどることを保証するものではありません。当協会は、標準治療をやめることを勧めるものでもありません。
食事や体力の悩みも含めて、お一人おひとりの状況に合わせてお話を伺っています。
ご家族だけの相談、匿名・オンラインでも相談できる

当協会の無料相談は、電話(平日9時〜18時)、メール(365日24時間受付)、オンラインや対面に対応しています。匿名でも可能で、ご本人が同席されないご家族だけのご相談も歓迎です。相談の方法は、ご都合に合わせて選べます。
食道がんでは、食事の支度や付き添いなど、ご家族の負担が大きくなりがち。「何から考えればいいかわからない」という状態のままで構いません。当協会は医療機関ではなく、診断や治療は行いません。公的機関の情報をもとに考え方を整理し、主治医との対話を後押しすることが役割です。
父の治療のことでご家族だけで相談された40代の男性からは、「家の中では出せない気持ちを第三者に話せるだけで、こんなに軽くなるものかと思いました」という声が届いています(当協会「ご相談者の声」より)。同じ立場の方の声は、次のページもあわせてご覧ください。
無料相談で一緒に整理できること

無料相談では、提示されている治療の選択肢の整理、次の診察で主治医に確認したい質問の書き出し、食事や痛みとの付き合い方、これからの時間の過ごし方、ご家族との関わり方などをお話しいただけます。
統合医療や補完代替療法について気になる情報があれば、公的機関の情報をもとに見極め方を一緒に考えましょう。特定の商品や治療法の勧誘は行っていません。手術ができないと言われた直後は、気持ちの整理が追いつかないもの。一人で抱え込む前に、まずは一度お話しください。ご家族だけのご相談も歓迎しています。
【まとめ】 食道がんは手術ができなくても、選択肢を整理すれば今できることが見えてくる

食道がんは、初期には症状がほとんどなく、進行すると食べ物のつかえや体重減少があらわれるがんです。全国がん登録の2018年診断例では、5年相対生存率は全体で48.8%、離れた臓器に転移した「遠隔」では10.9%でした。
手術ができない場合でも、ⅣA期は化学放射線療法、ⅣB期は免疫チェックポイント阻害薬を含む薬物療法が行われます。食べ物の通りをよくするステントや、痛みを和らげる放射線治療、緩和ケアも受けられる治療。標準治療をサポートする形で統合医療を組み合わせる道もあります。まずは、主治医に確認したいことを整理するところから始めてみてください。
手術ができないと言われても、まずは無料相談でお話しください

食道がんで手術ができないと言われた、余命のことが頭から離れない、食事がとれなくなってきて不安、ご家族としてどう支えればいいかわからない。当協会には、そうした段階の方からのご相談が多く寄せられています。公的機関の情報をもとに、選択肢と主治医に確認したいことを一緒に整理し、主治医との対話を後押しします。
お電話でのご相談は 03-5657-0995(平日9時〜18時)。メールでのご相談は365日24時間受け付けています。ご家族だけのご相談も可能です。
ほかの部位の相談事例は「がんの部位別事例一覧」でも紹介しています。
よくある質問

食道がんで手術ができないと言われました。これからどうすればよいですか?

まず、手術ができない理由とステージ(ⅣA期かⅣB期か)を主治医に確認しましょう。周りの臓器に広がったⅣA期では化学放射線療法、離れた臓器に転移したⅣB期では薬物療法が標準治療です。食事のつかえや痛みを和らげる治療、緩和ケアも並行して受けられます。一人で決めず、選択肢を整理してください。
詳しくは 手術ができないと言われる理由 を参照してください。
食道がんステージ4の余命はどのくらいですか?

余命を一律に示す公的な数値はありません。全国がん登録の2018年診断例では、離れた臓器に転移した「遠隔」の食道がんの5年相対生存率は10.9%でした。過去の集団の平均であり、その後の治療の進歩は十分に反映されていない数字です。見通しは、主治医に確かめてください。
詳しくは 食道がんの5年相対生存率 を参照してください。
食道がんの末期は痛みますか?

がんが食道の壁を越えて肺や背骨、大動脈などに広がると、胸の奥や背中に痛みを感じることがあります。骨に転移した場合も、多くは痛みを伴うとされています。ただ、痛みには放射線治療など和らげる方法があり、緩和ケアは診断されたときから受けられる支えです。我慢せず伝えましょう。
詳しくは 痛みをやわらげる治療 を参照してください。
食道がんの進行スピードはどのくらいですか?

進み方には個人差があり、一律の速さを示す公的な数値はありません。食道がんは、大きくなると食道の壁を越えて周りの臓器に広がり、リンパ節や肺、肝臓などに転移していきます。手術後の再発は2年以内のことが多いとされるため、症状の変化に気づいたら、次の受診を待たずに相談してください。
詳しくは 食道がんの広がり方 を参照してください。
食道がんの末期には、どんな症状がありますか?

食べ物や水が通りにくくなる、体重が減る、胸や背中が痛む、咳が出る、声がかすれるといった症状があらわれます。がんが食道をふさぐと、唾液も飲み込めなくなることも。ステントや放射線治療など、症状を和らげる方法は複数あります。食事がとれないときは、栄養を補う方法もあります。つらさは早めに伝えましょう。
詳しくは 進行したときの症状 を参照してください。
食道がんの原因は何ですか?

主な要因は喫煙と飲酒で、特に扁平上皮がんは強い関連があります。飲酒で生じるアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが生まれつき弱い人は、危険性が高まるとの報告も。熱いものを飲食する習慣も、危険性を高めるとされています。予防の基本は、禁煙と節酒です。野菜や果物を積極的に食べると、できにくくなるという報告もあります。
詳しくは 食道がんの発生要因 を参照してください。
食べ物が通らなくなったら、どうすればよいですか?

我慢せず、早めに担当医へ伝えてください。食道が狭くなって食べられないときは、金属の筒(食道ステント)で狭い部分を広げる方法や、新しい通り道をつくるバイパス手術があります。栄養を補うために胃ろうをつくることも選択肢の一つ。方法は、体の状態に合わせて選びます。水分もとれないときは、点滴で補います。
詳しくは 食べ物が通りにくいときの方法 を参照してください。
食道がんの手術後、食事はどうなりますか?

手術で食べ物の通り道が変わるため、一度に食べられる量が減り、体重が落ちやすくなります。動悸やめまいが起こるダンピング症候群や、逆流性食道炎にも注意が必要です。回数を増やして少しずつ、ゆっくりよくかんで食べましょう。3カ月ほどかけて元の量に戻すのが目安とされています。
詳しくは 食事の工夫とリハビリテーション を参照してください。
家族が食道がんの末期と言われたら、家族にできることは何ですか?

まず本人の気持ちと希望を聞き、主治医の説明に同席して、治療の目的や選択肢を一緒に確認しましょう。食事がとりにくいときは、食べ物を勧めすぎず見守ることも支えになります。家族自身の不安を一人で抱える必要はありません。当協会の無料相談などで、気持ちを話してみてください。
詳しくは 無料相談で整理できること を参照してください。
出典
本記事の医学的な事実と統計は、次の公的機関の一次情報に基づいています(2026年10月閲覧)。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス
- 緩和ケア(診断時からの緩和ケア・緩和ケアを受ける場・緩和ケア病棟・高額療養費制度)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」
- 食道(診断数2023年、死亡数2024年、5年相対生存率2018年診断例、相対生存率の定義)
- 全国がん登録生存率データ cancer_survivalNCR(2016-2018).xlsx(最新データ〈進行度別〉シート、食道 C15)
- 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会による統合医療の位置づけ(厚生労働省 eJIM、統合医療に関する日本の見解と意向)
| 本記事で示した数値 | 出典 |
|---|---|
| 診断数 25,889例(男性20,977例、女性4,912例。2023年) | がん統計「食道」 |
| 5年相対生存率 全体48.8%、限局83.3%、領域35.5%、遠隔10.9%(2018年診断例) | 全国がん登録生存率データ(最新データ〈進行度別〉) |
| 診断時の進行度の割合 限局38.3%、領域36.7%、遠隔18.6%(2018年診断例) | 同上 |
| 組織型の割合 扁平上皮がん90%弱、腺がん7%程度 | 食道がんについて |
| 重複がんの頻度 約20% | 食道がんについて |
| 手術の合併症が命に関わる確率 2〜3% | 食道がん 治療 |
| 経過観察の頻度 おおよそ年1〜4回程度、手術後の再発は2年以内が多い | 食道がん 療養 |

