この記事でわかること

原発不明がんは、最初にできた臓器がわからないまま転移が見つかるがんです。特定のがんに近いタイプはそのがんと同じ治療ができ、それ以外にも薬物療法や緩和ケアがあります。公的情報をもとに整理しました。
- 原発不明がんがどんながんで、どのくらいの人がかかるのか
- 転移した場所(リンパ節・胸膜・腹膜・肺・肝臓・骨)ごとの症状
- 特定のがんに近いタイプと、そうでないタイプの違い
- 「ステージ4」の考え方と、余命の数字の読み方
- 原発巣を探す検査と、ニボルマブやプラチナ系薬剤を使う薬物療法
- 治療が難しいと言われたときに確認できることと、当協会の無料相談
原発不明がんと言われても、できることがある

「原発不明がんと言われた。どんながんなのか」「余命と、これからの治療を知りたい」。この章では、原発不明がんがどのような状態を指すのかを公的機関の情報で整理し、この記事で扱う範囲を示します。最初にできた場所がわからなくても、治療とケアの選択肢はあります。
原発不明がんとは、どんながんなのか

がんは、最初に発生した臓器から、リンパ管や血管などを通じてリンパ節や離れた臓器に転移します。転移したがんが見つかったにもかかわらず、十分な検査を行っても最初に発生した臓器がわからないがんを、原発不明がんといいます(出典:「原発不明がん」)。
がんが見つかりやすい場所は、リンパ節、胸膜、腹膜、肺、肝臓、骨など。最初にできた場所を「原発巣」と呼び、原発不明がんは、この原発巣がはっきりしないまま転移したがんだけがわかっている状態なのです。がんには必ず最初に発生した臓器があるはずで、ほとんどの場合は検査でその場所がわかります。
この記事でわかる範囲と、情報の時点

この記事では、原発不明がんの特徴から症状、分類、ステージの考え方、検査、治療法、そして治療が難しい・末期と言われたときの選択肢までを、一覧で把握できるようにまとめました。医学的な事実は国立がん研究センターの希少がんセンターとがん情報サービスの情報を根拠にし、当協会の立場からの情報とは分けて書いています。
原発不明がんには、さまざまな病態が含まれます。そのため、この記事の内容がすべての方にそのまま当てはまるとは限りません。ご自身の病態と見通しは、主治医に確かめてください。
最初にできた場所がわからなくても、治療の選択肢はある

「原発がわからない」と告げられると、どう治療すればよいのかもわからないのではと不安になる方は少なくありません。しかし原発不明がんの中には、病変の広がり方や組織型から、特定のがんに近いと考えられるタイプがあります。その場合は、そのがんと同じ治療で同等の成績が得られることがわかっています。
それ以外のタイプにも、保険診療で受けられる薬物療法や緩和ケアがあり、標準治療をサポートする形の統合医療という考え方も。大切なのは、選択肢を整理して主治医に確認すること。当協会では、その整理を無料でお手伝いしています。
原発不明がんの特徴と、原因について

原発不明がんは、一つの臓器のがんではなく、さまざまな病態をまとめた呼び名です。この章では、その特徴と患者さんの数、原因の考え方を整理します。
さまざまな病態を含み、すべて合わせると成人の固形がんの1〜5%

原発不明がんには、病気の部位やがんの組織型が異なる、さまざまな病態が含まれます。患者さんごとに病気の状態が異なり、個々の病態は患者さんの数が少ない、まれながんといえます。肺がんや胃がんのように、一つの臓器のがんを指す病名ではない点を知っておきましょう。
一方で、原発不明がんと診断される方をすべて合わせると、成人の固形がんの1%から5%を占めるとされ、患者さんの数は決して少なくありません(出典:「原発不明がんの解説」)。さまざまな病態を含むため、原因を一つにまとめて示すことは難しいでしょう。
希少がんのため、情報や診療経験のある医師を見つけにくい

原発不明がんは、診断される人が人口10万人あたり6人未満の「希少がん」の一つに数えられています。希少がんはかかる人が少ないため、病気や治療に関する詳しい情報や、十分な診療経験を持つ医師を見つけにくいことがあります。
そのため、正確な診断名を知り、相談できる窓口を早めに知っておくと心強いもの。がん相談支援センターや希少がんホットラインでは、受診先についても相談できます。窓口の詳しい内容は9章で紹介します。一人で情報を探し回らずに、こうした窓口を頼ってください。
原発不明がんの症状は、転移した場所によって変わる

原発不明がんでは、がんが転移した場所に関連した症状があらわれます。この章では、転移した場所ごとに、あらわれやすい症状を整理します。
リンパ節に転移すると、首やわきの下などにしこりができる

がんがリンパ節に転移すると、リンパ節が腫れてしこりをつくります。ほとんどの場合、痛みはありません。首の周り、わきの下、太ももの付け根など、体の表面近くにあるリンパ節に転移した場合は、皮膚の上から触ってしこりがわかることがあります。
痛みがないため、様子をみてしまう方もいるかもしれません。ただ、リンパ節の腫れは、がん以外の病気でも起こります。しこりが続くときや、だんだん大きくなるときは、かかりつけの医師などに相談しましょう。なお、転移があっても症状がないこともあります。
胸膜・腹膜に転移すると、胸水や腹水がたまる

がんが胸膜に転移すると、胸水がたまり、息苦しさを感じることがあります。胸膜とは、肺の表面や胸壁の内側をおおう膜のことです。たまった胸水は、がん細胞が含まれていないかを調べる細胞診の検査にも使われます。
また、胃や腸のあるおなかの空間をつくる壁を包む膜、腹膜に転移すると、腹水がたまって腹部膨満感(おなかが張った感じ)が出てくることがあります。息苦しさやおなかの張りは、日常生活のつらさにつながりやすい症状。和らげるための処置や緩和ケアがあるので、我慢せず担当医に伝えてください。
肺・肝臓・骨に転移したときの症状

肺や肝臓への転移は症状がないことも多いものの、がんの大きさや数、場所によっては症状が出ることも。肺転移では咳や胸の痛み、肝転移ではおなかの上部の不快感や張り、しこりに触れるといった症状がみられることがあります。
骨に転移して骨膜や神経が障害されると、痛みが生じます。転移したがんによって骨が弱くなり、骨折することもあるでしょう。背骨への転移では、がんが骨の外に広がって脊髄や神経を圧迫し、しびれや痛み、麻痺が起こることもあります。手足のしびれや麻痺に気づいたときの対応は、6章で紹介します。
原発不明がんの分類と、特定のがんに近いタイプ

原発不明がんは、病変の分布と組織型の組み合わせによって、治療の考え方が変わります。この章では、特定のがんに近いタイプと、そうでないタイプの違いを整理します。
一部は、特定のがんと同じ治療で同等の成績が得られる

原発不明がんの中には、特徴的な病変の分布や組織型の組み合わせをもち、特定の原発巣のあるがんと非常に近い病態である可能性が報告されているものがあります。その場合は、そのがんと同じ治療を行うことで、同等の治療成績が得られることがわかっています。
たとえば、女性でわきの下のリンパ節だけに腺がんが見つかった場合は、乳がんと同じ治療を検討するといった具合です。下の表は、特定の治療方法がすすめられる例です。自分がこうしたタイプにあたるかどうかは、検査の結果をもとに主治医に確認してください。
| 病変の分布・組織型などの特徴 | 準じて行う治療 |
|---|---|
| 女性で、わきの下のリンパ節だけに腺がんの転移がある | わきの下のリンパ節に転移した乳がんの治療 |
| 女性で、漿液性腺がんによるがん性腹膜炎だけがある | 卵巣がんの治療 |
| 男性で、骨に多発する造骨性の転移があり、PSAが高い(または免疫染色でPSA陽性) | 転移した前立腺がんの治療 |
| 50歳以下の男性で、縦隔・後腹膜のリンパ節など体の中心線上に低分化・未分化がんがある | 性腺外に発生した胚細胞腫瘍の治療 |
| 首の上・中部のリンパ節だけに扁平上皮がんの転移がある | 頭頸部がんの治療 |
| 免疫染色や分子生物学的な特徴が大腸がんに近い腺がん | 転移した大腸がんに準じた治療 |
| 悪性度の低い神経内分泌腫瘍で、骨や肝臓に転移がある | 神経内分泌腫瘍・神経内分泌がんの治療 |
| 限られたリンパ節だけに転移がある | 手術や放射線治療などの局所療法を検討 |
大部分は、特定の治療方法がないタイプ

一方、大部分の原発不明がんは、病変の分布と組織型の組み合わせが特徴的ではなく、病態に応じた特定の治療方法がありません。このタイプでは、病気の進行を遅くすることと、がんによる症状を和らげることが治療の目標になります。
腫瘍の進行を抑えるのは薬物療法が中心で、症状を和らげるためには、病状に応じて薬物療法や放射線治療を含む最も効果的な方法が用いられます。どちらのタイプかによって、治療の目的そのものが変わるのです。主治医に「自分はどちらのタイプか」を尋ねてみましょう。
原発不明がんの「ステージ4」と、生存率・余命の目安

「原発不明がんのステージ4と言われた。余命はどのくらいなのか」。この章では、原発不明がんの進行の考え方と、生存率や余命の数字を読むときに知っておきたいことを整理します。
原発不明がんは、すでに進行して転移している病態と考える

多くのがんでは、離れた臓器への転移があるとステージ4に分類されます。原発不明がんは、転移したがんが見つかって診断されるため、すでに進行して転移している病態と考えます。「ステージ4」と同じように受け止められるのは、このためでしょう。
ただし、すべてが同じ状態ではありません。前の章で紹介したように、特定のがんに近いタイプや、限られたリンパ節だけに転移があるタイプでは、それぞれに合った治療が検討されます。自分がどの病態にあたるのかを、まず主治医に確認しておきましょう。
がんが転移したと告げられたときの考え方は、次の記事も参考にしてください。
原発不明がんの生存率は、全国がん登録で部位として公表されていない

生存率は、がんの見通しを知る手がかりになる数字です。ただ、全国がん登録の進行度別5年相対生存率(2018年診断例)では、原発不明がんは独立した区分として示されていません(出典:「全国がん登録生存率データ」)。
さまざまな病態を含むため、一つの数字で見通しを示すこと自体が難しいがんでもあります。インターネット上で見かける数字には、海外の調査や、特定のがんに近いタイプを含むものもあるので注意が必要です。数字を見かけたら、出どころと対象を確かめたうえで、主治医に意味を尋ねてください。
余命が数字どおりにならない理由と、見通しの確かめ方

余命を一律に示す公的な数値はありません。見通しは、特定のがんに近いタイプかどうか、転移の広がり、薬物療法の効き方、体力や全身の状態などによって、一人ひとり大きく変わります。
医師から余命を告げられた場合も、それは多くの患者さんの経過をもとにした目安で、ご本人がそのとおりの経過をたどるとは限りません。「その見通しは何をもとにしているのか」「治療が効いた場合はどう変わるのか」を主治医に尋ねてみましょう。数字に振り回されず、今できることに目を向けることも大切です。
余命を告げられたときの考え方や選択肢は、次の記事にもまとめました。
進行の仕方と、注意したい症状の変化

原発不明がんでは、転移したがんが大きくなるにつれて、場所に応じた症状が出てきます。この章では、進行に伴う体の変化と、早めに伝えたい症状を整理します。
腫瘍が大きくなると、場所に応じた症状が出て体力が落ちる

悪性腫瘍には、ほかから影響を受けずに成長して大きくなる性質があります。大きくなると、腫瘍がある場所に応じて症状があらわれ、その結果として体力や内臓の機能が低下していきます。原発不明がんに限らず、がん全般にみられる性質です。
そのため治療では、薬物療法で腫瘍の進行を抑えることと、症状を軽くすることを並行して考えます。体力が落ちると、受けられる治療の選択肢にも影響しかねません。食欲や体重、疲れやすさの変化も、診察のたびに伝えておくとよいでしょう。体力を保つ工夫については、主治医や看護師にも相談できます。
背骨への転移による、しびれや麻痺は早めに伝える

骨への転移では、骨が弱くなって骨折することがあります。背骨に転移した場合は、がんが骨の外に広がって脊髄や神経を圧迫し、しびれや痛み、麻痺が起こることもあります。
手足のしびれや力の入りにくさ、急に強くなった背中の痛みなどに気づいたら、次の診察を待たずに医療機関へ連絡してください。早く対処するほど、生活への影響を小さくできる可能性があります。痛みそのものも、薬や放射線治療などで和らげる方法があるので、我慢しないことが大事です。骨折を防ぐために、転移のある骨に負担をかけない動き方を相談しておくのも一つの方法です。
原発不明がんの検査方法

原発不明がんの診断には、がんであることを確かめる検査と、最初にできた場所を探す検査があります。この章では、病理検査、全身の検査、腫瘍マーカーの役割を整理します。
病理検査で、がんの種類と由来の手がかりを調べる

原発不明がんでも、がんであることを確定するには病理検査が必要です。病理検査では、がん細胞や組織の形を観察し、免疫染色という方法で特定のたんぱく質の有無を調べて、がん細胞がどの臓器に由来するかの手がかりを得ます。
痰や尿、胸水、腹水などの細胞を調べる細胞診は、がんかどうかの当たりをつけるのに有効です。ただし診断には十分ではなく、より大きな組織を採る組織診で、原発巣を推定します。組織を採る方法を生検といい、外科的に一部を切除する方法や、太めの針で採る方法などがあります。
全身を調べて、最初にできた場所を探す

検査の前には、症状が出てからの経過やこれまでの病気、家族の病気などを尋ねる問診と診察で、原発巣の手がかりを探します。そのうえで、腫瘍マーカーを含む血液検査や尿検査、超音波、胸部X線、CTやMRIなどの画像検査を行います。
必要に応じて、乳房・婦人科・泌尿器科の診察や直腸診、胃カメラや大腸カメラ、FDG-PET/CT検査も実施。特に頭や首、肺の原発を見つけるには、FDG-PET/CT検査が役立つとされています。こうした十分な検査でも原発巣がわからない場合に、原発不明がんと診断されます。
診断直後で混乱していた50代の女性は、当協会の相談で主治医に質問すべきことが整理でき、次の診察が少し怖くなくなったと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。
腫瘍マーカーは、限られたがんを探す手がかりになる

腫瘍マーカーは、腫瘍細胞から出てくる物質を血液で調べる検査です。ただし、体の中にがんがあっても高い値を示さないことがあり、逆にがんがなくても高くなる場合があります。
一方で、胚細胞腫瘍、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がんといった限られたがんを探すには役立ちます。たとえば前立腺がんではPSA、卵巣がんではCA125が手がかりです。診断のときに高かったマーカーは、その後の治療の効果を判断する参考になる場合もあります。数値だけで判断せず、主治医の説明とあわせて受け止めましょう。
原発不明がんの治療方法と費用感

原発不明がんの治療は、どのタイプにあたるかによって考え方が変わります。この章では、特定のがんに準じた治療、局所療法、薬物療法、費用、統合医療の考え方を整理します。
特定のがんに近いタイプは、そのがんに準じた治療を行う

病変の分布や組織型から特定のがんに近いと判断された場合は、そのがんと同様の治療を行います。乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、大腸がん、胚細胞腫瘍、神経内分泌腫瘍などに準じた治療です。
こうしたタイプでは、特定のがんと同様の治療を行うことで、そのがんと同等の治療成績が得られることがわかっています。どのがんに近いと考えられているのか、なぜそう判断されたのかを、主治医に確認しておきましょう。治療の詳しい内容を知るには、近いと判断されたがんの解説も参考になるでしょう。
乳がんや卵巣がん、前立腺がん、大腸がんなどの解説は、部位別の一覧ページから探せます。
限られたリンパ節だけの転移では、手術や放射線治療を検討する

転移が限られた範囲のリンパ節だけにある場合は、外科切除や放射線治療といった局所療法を検討します。がんのある場所に範囲を絞って行う治療の方法です。
一方、転移が全身に広がっている場合は、がんを手術で完全に取り去ることは難しく、薬物療法が中心になります。自分の転移がどこまで広がっているのか、局所療法の対象になるのかは、画像検査の結果をもとに主治医と確認しましょう。手術や放射線治療を受ける場合は、目的と体への負担について、担当する医師から具体的な説明を受けてください。
薬物療法は、プラチナ系薬剤を使う治療とニボルマブが中心

原発不明がんの化学療法は、最適な薬剤がまだ確立していません。現在のところ、原発不明がんとして保険適用されているのは、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブのみです。
そのほか、シスプラチンやカルボプラチンというプラチナ系薬剤を、いろいろな抗がん剤と組み合わせた治療が行われています。広く用いられている代表的な治療は、カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法。抗がん剤は体に負担がかかる副作用があるため、全身の状態や内臓の機能を考えながら薬が選ばれます。薬の組み合わせについては、現在も臨床試験で検討が続いています。
治療費は保険診療が基本、高額療養費制度で自己負担に上限がある

原発巣を探す検査や、手術、放射線治療、薬物療法などの標準的な治療は、いずれも保険診療で受けられます。医療費が一定額以上になった場合は、高額療養費制度を利用して、自己負担限度額までの支払いとすることが可能です。
一方、保険が使えない自由診療の治療は全額が自己負担になり、効果が証明されていないものも含まれます。自由診療を検討するときは、効果の根拠と総額の費用を、始める前によく確かめてください。治療費や生活のお金の不安は、がん相談支援センターでも無料で相談できます。
統合医療・自然療法を組み合わせるという選択肢

統合医療は、厚生労働省の検討会で「近代西洋医学を前提として、これに補完代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOLを向上させる医療」と位置づけられています。標準治療をサポートする形で、食事の改善、運動、温熱療法、心のケアなどを組み合わせる考え方です。
補完代替療法の多くは自由診療で、自己負担が増えることも少なくありません。原発不明がんでは検査や治療が長く続くこともあるため、体力や気持ちを保つ工夫を取り入れる方もいます。取り入れるものは必ず主治医に伝え、根拠と費用を確認して選んでください。
当協会は、この定義に基づき、標準治療をサポートする形で信頼性の高い補完代替療法の情報を整理・提供している一般社団法人です。医師や大学教授が理事を務め、特定の商品や治療法を勧めることはありません。協会が紹介している療法の分類は、次のページで確認できます。
治療が難しい・末期と言われたときの選択肢

「原発不明がんと言われた。余命や治療の選択肢はどうなるのか」。この章では、治療の目標の考え方、遺伝子パネル検査と臨床試験、緩和ケア、療養の場所、相談窓口を順に整理します。
治療の目標は、進行を遅らせ、症状を和らげること

特定の治療方法がないタイプの原発不明がんでは、すでに進行して転移している病態と考えられ、手術でがんを完全に取り去ることは難しいとされています。そのため、病気の進行を遅くすることと、がんによる症状を和らげることが治療の目標です。
根治が難しいと聞くと、何もできないように感じるかもしれません。それでも、薬物療法で進行を抑えながら、痛みや息苦しさを和らげて過ごす時間を支える治療があります。これから何を大切にして過ごしたいかを、主治医や家族と早めに話しておきましょう。
がん遺伝子パネル検査と臨床試験を確認する

多数の遺伝子を一度に調べる「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療がない、または終了した固形がんなどの条件を満たす場合に、一部が保険診療で行われています(出典:「がんゲノム医療 もっと詳しく」)。対象になるかどうかは、担当医に相談してみてください。
原発不明がんでは、薬の組み合わせを検討する臨床試験も続けられています。参加できる臨床試験は、がん情報サービスの「がんの臨床試験を探す」でも検索できます。気になる試験が見つかったら、参加の条件も含めて主治医に相談しましょう。
痛みや息苦しさをやわらげる、緩和ケア

緩和ケアは、がんと診断されたときから始まります(出典:「緩和ケア」)。体や心のつらさを和らげるケアで、終末期だけのものではなく、薬物療法などの治療と並行して受けられます。
原発不明がんでは、骨の痛み、胸水による息苦しさ、腹水によるおなかの張りなど、転移した場所に応じたつらさが出ることがあるもの。「どこが、いつ、どのくらいつらいか」をできるだけ具体的に伝えると、対処を考えてもらいやすくなります。原発がわからない不安や気持ちの落ち込みも、緩和ケアで相談できる対象です。
緩和ケアの話が出て目の前が真っ暗になったという70代の男性も、「緩和ケアはつらさを和らげながら自分らしく過ごすための医療」という考え方を知って誤解が解けたと話しています(当協会「ご相談者の声」より)。
在宅緩和ケアと緩和ケア病棟(ホスピス)から、療養の場所を選ぶ

緩和ケアを受ける場は、大きく通院、入院、在宅療養の3つに分けられます。入院では、一般病棟のほか、緩和ケアに特化した緩和ケア病棟で受けることも可能です。緩和ケア病棟は、できる限り日常生活に近い暮らしができるように作られています。
自宅で過ごすなら、訪問診療や訪問看護などのサービスを整える準備が必要です。療養の場所や利用できる制度については、がん相談支援センターでも相談できます。どこで過ごすかに、一つの正解はありません。本人の希望と家族の負担を、合わせて考えていきます。
緩和ケアやホスピスをすすめられたときに検討したいことは、次の記事をご覧ください。
希少がんの相談窓口とセカンドオピニオンを活用する

希少がんは診断や治療の経験を持つ医師が身近にいないこともあり、病院探しや情報集めに工夫が要ります(出典:「まれながんや希少がんと言われたときに知っておきたい情報や病院の探し方」)。全国の希少がんセンターなどにある「希少がんホットライン」では、本人や家族が、診断や治療、セカンドオピニオンについて電話で相談できます。
別の医師の意見を聞くセカンドオピニオンは、納得して治療を受けるために認められている仕組み。主治医には、病理検査の結果、特定のがんに近いタイプかどうか、提案されている治療の目的を確認しておきましょう。
当協会に寄せられる原発不明がんのご相談と無料相談

一般社団法人日本がん難病サポート協会には、さまざまな段階のがんの方やご家族から、ご相談が寄せられています。この章では、無料相談の方法と、一緒に整理できることをご紹介します。
転移が見つかった段階でも、ご相談いただけます

当協会の部位別事例一覧には、原発不明がんの相談事例は掲載していませんが、転移が見つかった段階や再発など、同じような状況の方からのご相談を多くいただいています。ほかの部位の事例は、一覧ページで紹介しています。
原発がわからないまま検査が続くと、「何のがんかもわからないのに、どう考えればいいのか」と途方に暮れてしまうこともあるでしょう。どの段階であっても、「こんなことを相談してよいのか」と迷う必要はありません。お一人おひとりの状況に合わせて、お話を聞かせてください。
ご家族だけの相談、匿名・オンラインでも相談できる

当協会の無料相談は、電話(平日9時〜18時)、メール(365日24時間受付)、オンラインや対面に対応しています。匿名でも可能で、ご本人が同席されないご家族だけのご相談も歓迎です。相談の方法は、ご都合に合わせて選べます。
診断がつくまでの長い検査で、ご本人もご家族も疲れきってしまうことがあるもの。「何から考えればいいかわからない」という状態のままで構いません。当協会は医療機関ではなく、診断や治療は行いません。公的機関の情報をもとに考え方を整理し、主治医との対話を後押しすることが役割です。
父の治療のことでご家族だけで相談された40代の男性からは、「家の中では出せない気持ちを第三者に話せるだけで、こんなに軽くなるものかと思いました」という声が届いています(当協会「ご相談者の声」より)。同じ立場の方の声は、次のページもあわせてご覧ください。
無料相談で一緒に整理できること

無料相談では、提示されている治療の選択肢の整理、次の診察で主治医に確認したい質問の書き出し、副作用や痛みとの付き合い方、これからの時間の過ごし方、ご家族との関わり方などをお話しいただけます。
統合医療や補完代替療法について気になる情報があれば、公的機関の情報をもとに見極め方を一緒に考えましょう。特定の商品や治療法の勧誘は行っていません。原発不明がんと告げられた直後は、情報の少なさに戸惑うもの。一人で抱え込む前に、まずは一度お話しください。ご家族だけのご相談も歓迎しています。
【まとめ】 原発不明がんと言われても、病態を確かめれば今できることが見えてくる

原発不明がんは、転移したがんが見つかったのに、十分な検査をしても最初に発生した臓器がわからないがんです。症状は転移した場所によって変わり、日本の公的な統計では生存率が独立した区分として示されていないため、余命の見通しは一人ひとり異なります。
一部は特定のがんに近いタイプとして、そのがんと同じ治療で同等の成績が得られます。それ以外のタイプにも、ニボルマブやプラチナ系薬剤を使う薬物療法、緩和ケア、標準治療をサポートする形の統合医療を組み合わせる道が。まずは、自分の病態と主治医に確認したいことを整理するところから始めてみてください。
原発がわからないと言われても、まずは無料相談でお話しください

原発不明がんと言われ、何のがんかわからないまま不安が続いている、余命のことが頭から離れない、薬物療法のほかにできることを知りたい、検査が長引いて疲れてしまった、ご家族としてどう支えればいいかわからない。当協会には、そうした段階の方からのご相談が多く寄せられています。公的機関の情報をもとに、選択肢と主治医に確認したいことを一緒に整理し、主治医との対話を後押しします。
お電話でのご相談は 03-5657-0995(平日9時〜18時)。メールでのご相談は365日24時間受け付けています。ご家族だけのご相談も可能です。
ほかの部位の相談事例は「がんの部位別事例一覧」でも紹介しています。
よくある質問

原発不明がんと言われました。どんながんで、余命や治療の選択肢はどうなりますか?

転移したがんが見つかったのに、最初にできた臓器がわからないがんです。余命を一律に示す公的な数値はありません。特定のがんに近いタイプなら、そのがんと同じ治療で同等の成績が得られます。それ以外のタイプでは、薬物療法で進行を遅らせ、緩和ケアで症状を和らげることが治療の目標です。
詳しくは 特定のがんに近いタイプ を参照してください。
原発不明がんとは、どのようながんですか?

がんは最初にできた臓器から、リンパ節や離れた臓器に転移します。転移したがんが見つかったにもかかわらず、十分な検査を行っても最初に発生した臓器がわからないがんを、原発不明がんといいます。がんが見つかりやすい場所は、首などのリンパ節、胸膜、腹膜、肺、肝臓、骨などです。
詳しくは 原発不明がんとは を参照してください。
原発不明がんは、どのくらいの人がかかりますか?

原発不明がんは、診断される人が人口10万人あたり6人未満の希少がんの一つに数えられています。一方、さまざまな病態を含むため、診断される方をすべて合わせると、成人の固形がんの1%から5%を占めるとされます。個々の病態はまれでも、患者さんの数は決して少なくありません。
詳しくは 原発不明がんの特徴 を参照してください。
原発不明がんは完治しますか?

完治できるかどうかは、タイプによって異なるのが実情です。特定のがんに近いタイプでは、そのがんと同じ治療で同等の成績が得られることがわかっています。限られたリンパ節だけの転移なら、手術や放射線治療も選択肢の一つ。大部分のタイプは根治が難しいとされますが、進行を遅らせ、症状を和らげる治療があります。
詳しくは 原発不明がんの分類 を参照してください。
原発不明がんの末期には、どんな症状がありますか?

症状は、がんが転移した場所によって変わります。胸膜への転移では胸水による息苦しさ、腹膜への転移では腹水によるおなかの張り、骨への転移では痛みや骨折がみられることがあります。腫瘍が大きくなると、体力も落ちやすくなるもの。つらさは緩和ケアで和らげられるので、我慢せず伝えてください。
詳しくは 転移した場所ごとの症状 を参照してください。
原発不明がんのステージ4とは、どういう状態ですか?

多くのがんでは、離れた臓器に転移があるとステージ4に分類されます。原発不明がんは転移したがんが見つかって診断されるため、すでに進行して転移している病態と考えられているのです。ただし、特定のがんに近いタイプや、限られたリンパ節だけの転移などでは、それぞれに合った治療が検討されます。
詳しくは 原発不明がんの進行の考え方 を参照してください。
原発不明がんになりやすい人はいますか?

原発不明がんには、病気の部位や組織型の異なるさまざまな病態が含まれるため、原因やなりやすい人を一つにまとめて示すことは難しいのが現状です。気になる症状が続くときは、かかりつけの医師などに相談しましょう。リンパ節のしこりや息苦しさ、おなかの張り、骨の痛みなどが手がかりになります。
詳しくは 原発不明がんの症状 を参照してください。
原発不明がんは、どんな検査で調べますか?

がんであることを確かめる病理検査と、最初にできた場所を探す全身の検査を行います。問診と診察のあと、腫瘍マーカーを含む血液・尿検査、超音波やCT・MRIなどの画像検査、必要に応じて胃カメラや大腸カメラ、FDG-PET/CT検査などを実施。それでもわからない場合に、原発不明がんと診断されます。
詳しくは 原発巣を探す検査 を参照してください。
家族が原発不明がんと言われたら、家族にできることは何ですか?

まず本人の気持ちと希望を聞き、主治医の説明に同席して、病態や治療の目的を一緒に確認しましょう。検査が長く続くときは、付き添いや結果の記録を引き受けることも支えになります。家族自身の不安を一人で抱える必要はありません。当協会の無料相談などで、気持ちを話してみてください。
詳しくは 無料相談で整理できること を参照してください。
出典
本記事の医学的な事実は、次の公的機関の一次情報に基づいています(2026年11月閲覧)。
- 国立がん研究センター 希少がんセンター
- 原発不明がん(原発不明がんの定義と頻度・診断〈病理検査・免疫染色・細胞診と組織診・原発巣のスクリーニング・FDG-PET/CT・腫瘍マーカー〉・特定の治療方法が推奨される原発不明がん・特定の治療方法のない原発不明がん・薬物療法〈ニボルマブ・プラチナ系薬剤〉・臨床試験)
- 全国の希少がんセンターに設置されている希少がんホットライン(希少がんホットラインの窓口)
- 国立がん研究センター がん情報サービス
- 原発不明がん(原発不明がんとは・がんが見つかりやすい場所・転移した場所ごとの症状・希少がん)
- がんゲノム医療 もっと詳しく(がん遺伝子パネル検査の対象と保険診療)
- まれながんや希少がんと言われたときに知っておきたい情報や病院の探し方(希少がんの定義・情報や病院探しのポイント・がん相談支援センター・希少がんホットライン・セカンドオピニオン)
- 緩和ケア(緩和ケアを始める時期・緩和ケアを受ける場・緩和ケア病棟・高額療養費制度)
- セカンドオピニオン(セカンドオピニオンとは)
- がんの臨床試験を探す(臨床試験の検索)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」
- 全国がん登録生存率データ cancer_survivalNCR(2016-2018).xlsx(最新データ〈進行度別〉シート。原発不明がんは独立した区分として示されていない)
- 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会による統合医療の位置づけ(厚生労働省 eJIM、統合医療に関する日本の見解と意向)
| 本記事で示した数値 | 出典 |
|---|---|
| 原発不明がんは人口10万人あたり6人未満の希少がん | がん情報サービス「原発不明がん」 |
| 原発不明がんは、すべて合わせると成人の固形がんの1〜5% | 希少がんセンター「原発不明がん」 |
| 特定の治療方法が推奨される例(50歳以下の男性など) | 同上 |

