国の見解と意向

Trends in our country

以下は行政(厚生労働省)の公式サイト「統合医療のあり方に関する検討会」から引用しております。統合医療に関しての国の意向がかかれていますので、ご参考にしてください。

1.はじめに

いわゆる「統合医療」は、近代西洋医学と相補・代替療法や伝統医学等とを組み合わせて行う療法であり、多種多様なものが存在する。
平成22年1月29日に、鳩山内閣総理大臣(当時)が、施政方針演説において、健康寿命を延ばす観点から、「統合医療」の積極的な推進について検討を進めることを掲げた。これを受けて、厚生労働省においては、省内にプロジェクトチームを発足させるとともに、厚生労働科学研究事業による知見の収集を図ってきた。一方、「統合医療」ついては、患者・国民や医療界において未だ共通認識が確立していない状況にあること、「統合医療」の療法は多種多様であるが故に安全性・有効性に関する科学的根拠
が求められることから、その推進に当たっては、これらの課題に適確に対処していく必要がある。
このため、これまで得られている知見や、「統合医療」を取り巻く状況を踏まえ、今般、専門的見地から検討を行い、今後の「統
合医療」のあり方について現時点における整理を行った。

2.「統合医療」について

(1)「統合医療」をとりまく背景
近代西洋医学は、感染症をはじめ様々な疾患について、治療方法の開発や病因の分析に多大な貢献をもたらした。一方で、がん、アレルギー疾患、精神疾患のように、食生活
やストレス等様々な複合要因によって起こりうる疾患については、必ずしも容易に克服できない状況が生じており、近代西洋医学だけでなく、漢方、健康食品、各種の民間療法が広く患者・国民に利用されているという実態がある。また、最近の科学の方向性として、従来から支持されているいわゆる「要素還元主義」により、ある複雑な事象をいくつかの単純な要素に分割し、それぞれの要素を理解することで元の複雑な事象を理解しようとする手法が見直されつつあり、例えば「複雑系」として全体を捉える手法の必要性が示唆されている。このような中、昨今、近代西洋医学の手法では説明しきれない各種の療法を、近代西洋医学と対立的に捉えるのではなく、むしろ、両者を組み合わせることによって、より大きな効果をもたらし得る新しい医療の概念として、「統合医療」の考え方が注目されてきた。
(2)本検討会における「統合医療」の定義
社団法人日本統合医療学会によると、「統合医療とは、さまざまな医療を融合し患者中心の医療を行うものです。科学的な近代西洋医学のみならず、伝統医学と相補・代替医療、更に経験的な伝統・民族医学や民間療法なども広く検討しています。」とされている。また、その特長としては、「1.患者中心の医療、2.身体のみならず、精神、社会(家族、環境など)、さらに最近は、スピリチュアルな面を含めた全人的医療、3.個人の自然治癒力の促進により、治療のみならず、むしろ増進を目標とする病気の予防や健康」が挙げられるとしている。米国衛生研究所相補代替医療センター(NCCAM:NationalCenter for Complementary and Alternative Medicine)においては、「統合医療」を「従来の医学と、安全性と有効性について質の高いエビデンスが得られている相補・代替医療とを統合した療法」と定義している。更に、相補・代替医療については、①天然物(Natural products:生薬、ビタミン類、無機物等の利用)の投与、②心身療法(Mind and body medicine:脳、精神、身体及び動作の相互作用に着目した、健康増進を目的とする行為(瞑想、ヨガ、鍼灸、太極拳 等))、③手技的な行為(Manipulative and body-based practices:骨、関節、循環系、リンパ系等の身体構造・組織に着目した行為(カイロプラクティック、マッサージ等))に分類している。なお、世界保健機関(WHO:World Health Organization)は、「伝統医療」について、「それぞれの文化に根付いた理論・信心・経験に基づく知見、技術及び実践の総和であり、健康を保持し、更に心身の病気を予防、診断、改善、治療することを目的としている。」としている。相補・代替療法や伝統医学等については、必ずしも医師等の医療従事者により提供されるものに限らず、医師等以外の者により提供される場合や、利用者自らが利用している場合がある。本検討会においては、以上の現状を踏まえつつ、「統合医療」を、「近代西洋医学を前提として、これに相補・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更に QOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」と位置付けることとした。また、検討会では、近代西洋医学と組み合わせる療法の範囲については、エビデンスの程度や有害性の如何に関わらず、あらゆる療法を一括りにして議論することに対して疑問が呈される等、相当議論があったところである。今後、療法の有効性だけでなく安全性に関する知見の集積状況も踏まえながら、療法の範囲について整理していくことが必要である。なお、検討会では、どのような療法が用いられているかは各国の事情により異なっていることから、各国の事例を参考にしながら、日本にふさわしい「統合医療」を展開していくべきとの意見があった。

3.「統合医療」の現状

(1)各種療法に関する科学的知見
平成22年度厚生労働科学研究「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」(研究代表者:福井次矢聖路加国際病院院長)において、2008年から2011年の4年間、コクランライブラリー(Cochrane Library)※に報告された相補・代替療法に関するシステマティックレビューについて、主な療法の数と有効性についての分析が行われている。この分析によると、鍼(はり)療法等の6件について「効果あり」とされているものの、大多数については、「未確定」とされている。 ※コクランライブラリー(Cochrane Library):「コクラン共同計画」(1992年に英国にて設立。保健医療に関し、医療提供者や患者等の各種ユーザーにおける十分な情報に基づく判断に役立てることを目指し、世界中の臨床研究についてシステマティック・レビュー(ある医学的介入について一定の基準で論文を網羅的に収集し、批判的評価 を加え、要約すること)を行う国際ネットワーク。レビューは 53 のグループがそれぞれ分野を担当して実施。)において作成されている文献データベース。ランダム化比較試験(RCT : Randomized Controlled Trial)関連では世界最大規模であり、医療関係者の信頼度は高い。このように科学的知見がほとんど得られていない理由として、相補・代替療法は個人の反応が異なることからランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)が実施できない分野が多くあるとされており、評価が非常に困難であるためとされている。しかしながら、相補・代替療法に関するランダム化比較試験(RCT)の論文数は増加傾向にある。また、漢方薬のように国内において大規模臨床試験が進められ、作用機序が明らかになりつつあるなど一定の成果を挙げているケースもある。更に、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)ではランダム化比較試験(RCT)だけではなく、ベストケースの評価も行っている。また、今後、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)、プロテオーム解析、生体指標(バイオマーカー)といった新しい技術開発により、これまで不明であった療法の作用機序が客観的に解明される可能性がある。以上のことから、現時点では「統合医療」に関する科学的知見は必ずしも十分でないものの、これからの様々な取組によって明らかにされていくことが期待される。

(2)国内の状況(各種療法の利用状況)
平成22年度厚生労働科学研究「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」(研究代表者:福井次矢聖路加国際病院院長)によると、一般人を対象とした、医療機関以外で提供されている相補・代替療法等の利用状況に関する調査(回答数3,178人)では、いずれの療法においても、「利用したことがない」との回答が最も多かった。更に、「利用したことがあり、現在も利用することがある」療法としては、「サプリメント・健康食品」(33.8%)が最も多く、「各種マッサージ」(13.0%)、「整体」(10.4%)が続く結果となった。また、「以前利用したが、現在は利用をやめた」療法としては、「整体」(25.8%)が最も多く、「各種マッサージ」(24.3%)、「はり・きゅう」(21.4%)が続く結果となった。
利用をやめた理由としては、「効果が感じられない」、「身近に利用できる場所がない」、「お金がかかる」等が挙げられた。また、「断食療法」のように、「何らかの健康被害があった」ことを理由に挙げたものも認められた。利用後、納得がいかず、国民生活センター(消費生活センター)、保健所(保健センター)、都道府県庁、市町村役場等公的機関へ相談した経験の有無については、いずれの療法についても経験「あり」が認められ、「ホメオパシー」(14.0%)、「アーユルベーダ」(6.7%)、「温熱療法」(4.9%)等が多かった。このうち、「ホメオパシー」については、平成22年の健康被害に係る提訴と、これに関する日本学術会議会長談話発表等が報道されたことが影響している可能性がある。平成 22 年 5 月、山口市の女性が助産師を相手取り、約 5,600 万円の損害賠償を求める訴訟を提起(後に和解)したもの。訴状等によると、女性は平成 21 年 9 月に長女を出産。助産師は出血症を予防するためのビタミン K2 シロップを投与せずにレメディー(原料となる成分を水で希釈して砂糖玉に染み込ませたもの)を与え、長女はビタミン K 欠乏性出血症に基づく急性硬膜下血腫を発症し、同年 10 月に死亡したというもの。報道を受けて、日本学術会議、日本医師会、日本医学会等が療法の効果について否定的な見解を発表している。
一般を対象に、相補・代替療法等に対し持っているイメージについて調査を行ったところ(回答数3,107人)、「(療法について)わかっている」と回答したものは、「マッサージ」(40.5%)が最も多く、「漢方」(34.2%)、「サプリメント」(31.4%)が続く結果となり、逆に、「(療法について)わかっていない」と回答したものは、「ホメオパシー」(66.8%)が最も多く、「アーユルベーダ」(56.9%)、「温熱療法」(51.6%)が続く結果となった。また、「安心な」と回答したものは、「漢方薬」(53.8%)が最も多く、「マッサージ」(48.5%)、「整体」(26.5%)が続く結果となり、逆に、「不安な」と回答したものは、「ホメオパシー」(37.0%)が最も多く、「カイロプラクティック」(27.9%)、「整体」(24.8%)が続く結果となった。更に、「興味がある」と回答したものは、「マッサージ」(57.7%)が最も多く、「漢方薬」(54.1%)、「整体」(50.3%)が続く結果となり、逆に、「興味がない」と回答したものは、「ホメオパシー」(47.2%)が最も多く、「磁気療法」(35.3%)、「アーユルベーダ」(32.1%)が続く結果となった。
一般を対象に、医療機関以外で提供されている相補・代替療法等を利用する際の参考とする情報内容について調査を行ったところ(回答数3,227人)、「価格」(58.9%)が最も多く、「一般の人々の体験談」(38.5%)、「研究結果(データ)の提示」(37.7%)、「効果を示す文句」(37.0%)が続く結果となった。
この結果からは、必ずしもエビデンスに関する情報が最優先されている訳ではなく、むしろ、価格が低いことに関心が高いという可能性が示唆されている。
また、過去1ヶ月間(調査時点;平成23年2月)に利用した者について、利用の際に「医師に相談した」と回答したものは、「温熱療法」(32.4%)が最も多く、「はり・きゅう」(30.2%)、「骨つぎ・接骨」(26.7%)が続く結果となった。利用に際し、「医師からの紹介・推薦があった」と回答したものは、「温熱療法」(27.0%)が最も多く、「骨つぎ・接骨」(21.7%)、「食事療法」(20.4%)が続く結果となった。

4.諸外国における取組

平成22年度厚生労働科学研究事業「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」(研究代表者;福井次矢聖路加国際病院院長)、WHO西太平洋地域事務局による伝統医療の地域戦略に関する会議資料(平成24年5月)等によると、以下のとおりであった。

【米国】
米国衛生研究所相補代替医療センター(NCCAM)
・ 相補・代替医療に関し、安全性を最も重視しており、安全性や有効性についての研究費を外部の大学や研究機関に配分し、エビデンスの構築に努めている。
・ 相補・代替医療について、ウェブサイトを中心に、(i)患者/一般向け、(ii)医療従事者向け、の2種類の情報配信を行っている。ハーバード大学代替医学研究センター(1995 年設立)
・ ハーブ、鍼灸、太極拳、ヨガ、アーユルベーダ、瞑想(meditation)等に関する研究を実施。プラセボ(偽薬)効果に関する研究も実施。
・ 相補・代替医療に関する研究者の育成を行っている(3年間のプログラム。前述の NCCAM からの資金援助)。カリキュラムでは、初めに臨床研究の方法論、臨床疫学、医療統計を学ぶこととされている。
・ 関連診療所において、相補・代替医療を提供している。

【中国】
・ 国の医療政策においては、近代西洋医学と伝統中医学とが同等に取り扱われている。
・ 2011年に、第12次伝統中医学五カ年計画(2011~2015)が公表されており、同計画では、伝統中医学が積極的に保護、支援されるべきとされている。
・ 2006年~2011年に実施された国の調査によると、約44万の機関が伝統中医学を提供していることが判明した。また、外来患者数は年間9億人、中医学医師等は約41万人、中医学に関する大学は32か所で、約50万人の生徒が学んでいるという結果も公表されている。

【インド】
・ 医療体系は、近代西洋医学と伝統医学の二本立てとなっており、医療施設も医師もそれぞれ別立てとなっている。
・ 近代西洋医学の医師とインド伝統医学であるアーユルベーダの医師との協力により、近代西洋医学の最先端の技術と伝統的医療資源の知見を用いた臨床研究プロジェクト(Medicity)が進められている。

【韓国】
・ 医療体系は、近代西洋医学と伝統医学の二本立てとなっており、医療施設も医療従事者(医師、薬剤師)もそれぞれ別立てとなっている。2009年12月時点で、伝統医学を提供する病院数は158か所(約9千床)、診療所は約1万2千か所ある。伝統医学に関する大学は11か所あり、年間800人を超える卒業生を輩出している。
・ 拠点病院(慶煕大学校医療院東西新医学病院)において、近代西洋医学と伝統医学(韓医学)による統合医療の研究を行っている。
・ 8割を越える国民に伝統医学の経験があるとのこと。

5.今後の取組

(1)基本方針
「統合医療」は多種多様であり、かつ玉石混淆(ぎょくせきこんこう)とされている。また、現時点では、全体として科学的知見が十分に得られているとは言えず、患者・国民に十分浸透しているとは言い難い。このような状況下で「統合医療」を推進していくためには、患者・国民の信頼を得ることが重要であり、まずは、安全性・有効性等が適切な形で確立されなければならない。特に安全性の確保ができない「統合医療」を患者・国民に提供することは適当でない。また、患者にとっては、現在行われている治療法に限界を感じた際、他の療法に活路を見出そうとする可能性がある。しかしながら、この場合、療法に関する情報を求めるものの、様々な情報が氾濫している中で、より確実な内容の情報を必要としていると考えられる。以上のことから、今後の取組としては、「統合医療」の各療法について、安全性・有効性等に関する科学的知見を収集するとともに、これらを基にして必要な情報を広く発信していくことによって、患者・国民及び医師が療法を適切に選択できるようにすることが重要である。

(2)具体的取組
具体的には、国においては、国内外の「統合医療」及び近代西洋医学と組み合わせる各種の療法に関する学術論文を収集する体制を整備するとともに、国内の代表的な拠点において、医師をはじめとする多職種が関わることによって行われる臨床研究を支援し、その結果を還元するといった実践面のアプローチを併せて進めることによって、「統合医療」に関する科学的知見の集積を図ることが求められる。また、このような情報収集を行った上で、集積した科学的知見を基に、各種の公的機関と連携して、こうした情報をインターネット等を介して提供する仕組みづくりにも取り組むことが重要である。その際、情報が氾濫する現代においては、「要するに結果はどうなのか」等、簡略化された情報を求める傾向があることが指摘されている中で、いかに正確な情報を届けるかが極めて重要となっている。このため、患者・国民から相談を受ける医師等の医療従事者
や研究者が、正確な情報を把握し、これを相談者に分かりやすく伝えていくことが望ましいことから、患者・国民だけでなく、医療従事者や研究者にとっても利活用しやすい情報発信の仕組みを検討すべきである。

「統合医療」の情報発信の進め方について
(3)取組に際しての留意点
国は(2)の取組を行うに当たり、以下の点に留意すべきである。「統合医療」のエビデンスについては、ランダム化比較試験(RCT)のように、よりレベルの高いエビデンスが、より多く集積されることが望ましい。一方で、必ずしも全てがランダム化比較試験(RCT)による必要はないのではないかという意見もある。考慮できるエビデンスとしていくつかの段階があるとされているところ)、収集した科学的知見を情報発信する際には、そのエビデンスレベルを明示する形で行うべきである。
有効性に関する評価のあり方として、その傾向や連続性を捉えるという考え方もある(有意水準5%以下で作用機序が明確な場合だけではなく、有意水準10%以下で作用機序が明確な場合についても一定の評価を行う等)ことを踏まえて、科学的知見の収集の上、整理するべきである。 例えば食事療法でも食物アレルギーがあるように、どのような場面でどのように摂取するかによって有効性が変わり得る。このため、誰が、どのような属性をもった対象者(患者・国民)に、どの療法を用いて、その結果どうなったのか、といった知見を整理していくことが必要である。必然的に、療法を提供する側においては、対象者の特性や具体的手法等について記録に残す等、対外的に明らかにしていく努力が求められることになる。患者・国民や医師等による療法の選択を支援する観点からは、有効性の有無だけでなく、「現時点では有効性が認められていない」といった情報も有用である。健康被害状況等安全性に関する情報は極めて有用である。このため、これらの科学的知見も併せて収集し、情報発信すべきである。また、各国の政策の状況や、社会経済的側面、国民のニーズの動向など、社会科学的な知見の収集も重要と考えられる。情報収集及び発信の対象となる療法の範囲については、本検討会でも相当の議論があったが、現時点で一定の整理を行うことは困難であること、また、適切な医療を行う上で、有効性だけでなく安全性についても必要な情報を提供していくことが重要であることから、国内において現状行われていると考えられる療法を幅広く対象とする。

(4)その他
世界保健機関(WHO)では、国際疾病分類(ICD)の第10版から第11版への2015年改訂作業が進められており、その中で、「伝統医学」を盛り込むことが検討されている。また、国際標準化機構(ISO)において、中国は、同国の伝統医学である「中医学」の用語、治療法、免許、生薬の製造方法等の国際標準化を申請している。これらの動きが直ちに国内の医療に影響をもたらすかどうかは不明であるが、引き続き、注視していくことが必要である。
また、「統合医療」には、病気になる以前の状態(「未病」の状態)から兆候を捉え、治療を行っていくという考え方があり、予防的な意味合いを有するものもある。適切な生活習慣を維持する等、日頃から自身の健康管理に努めていくという姿勢が重要である。

6.おわりに

本検討会では、今後の「統合医療」のあり方に関し、様々な議論が交わされた。一例としては、これまで近代西洋医学が、国民の健康の向上に大きな成果を挙げてきた一方で、様々な病態が解明されていくに従い、医師等の専門性が臓器別等に細分化されていく中で、患者全体を診る全人的医療の重要性が話題に上った。また、医師をはじめとして各種の医療従事者等が連携して関わっていくチーム医療の重要性も改めて指摘された。このように、今回の検討においては、個別の療法の如何に関わらず、医療とはそもそも誰のためのものであり、今後どうあるべきかといった根本論について思いを致す場面があった。これらの議論は極めて本質的なものと言え、今後、「統合医療」に関する科学的知見が集積され、その詳細が明らかにされていく中でも、医療に関わる様々な立場の者にとって、引き続き意識されるべき命題と言える。


「統合医療」のあり方に関する検討会構成員名簿
(敬称略、五十音順)

氏名 所属・役職
伊藤壽記:大阪大学大学院医学系研究科教授
梅垣敬三:独立行政法人国立健康・栄養研究所 情報センター長
大島伸一:独立行政法人国立長寿医療研究センター総長
金澤一郎:元日本学術会議会長
羽生田俊:社団法人日本医師会副会長
広井良典:千葉大学法経学部総合政策学科教授
丸井英二:人間総合科学大学 大学院 人間科学部教授
南砂:読売新聞 東京本社編集局次長 兼 医療情報部長
門田守人:公益財団法人がん研究会 有明病院院長
渡辺賢治:慶應義塾大学医学部漢方医学センター 副センター長

検討会開催状況
第1回 平成 24 年 3 月 26 日(月)
・「統合医療」について
【ヒアリング】
渥美和彦 一般社団法人日本統合医療学会理事長
寺澤捷年 社団法人日本東洋医学会前会長
第2回 平成 24 年 4 月 25 日(水)
・「統合医療」の評価方法について
・「統合医療」をめぐる国際的な動向について
【ヒアリング】
福井次矢 財団法人聖路加国際病院院長
第3回 平成 24 年 8 月 6 日(月)
・「統合医療」に関するエビデンスについて
・論点整理
【ヒアリング】
高崎隆次 株式会社ツムラ医薬営業本部副本部長/学術戦略統括室長
第4回 平成 24 年 10 月 5 日(金)
・「統合医療」に関する情報発信のあり方について
・論点整理
【ヒアリング】
大野 智 早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構客員准教授
第5回 平成 25 年 2 月 8 日(金)
・これまでの議論の整理

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