統合医療とは

Integrated medicine

※渥美和彦氏の言葉を引用

新しい理想の医療

最近、我が国のみならず世界各国では医療崩壊の危機が叫ばれており、医療改革を求める国民の声もいよいよ高まってきている。
確かに、近代西洋医学は、この200年の間に次々と発見・開発された新しい科学技術の導入により著しい進歩を遂げ、各種疾病の治療や予防に大きく貢献してきた。しかし、“心の癒し”や“個々の医療におけるQOLの向上”など、個人のニーズには必ずしも応えることができなくなっている。

そこで、米国において検討されたのが、鍼灸、指圧、マッサージ、カイロプラクティック、ハーブ、ヨーガなどの相補・代替医療である。しかし、これらは近代西洋医学を“補完”する役割は果たすことができても、“代替”することはできないことが判ってきた。そこで、新しい理想の医療の考え方として登場したのが、近代西洋医学と相補・代替医療、それに伝統医学を加えた“統合医療”という概念である。

統合医療の定義とは

1)患者中心の医療
2)身体のみならず、精神、社会、さらにスピリチュアリティなど全人的医療
3)治療のみならず、むしろ疾病予防や健康増進に重点を置く医療
4)ヒトが生れて成人し、老化し、死ぬまでの一生の包括医療

米国で進む統合医療の研究
1981年、ハーバード大学のアイゼンベルグ教授が「米国民の代替医療に関す利用実態を調査したころ、国民の1/3が既に代替医療を利用している」という報告を行った。
この報告に外科医でもある一人の国会議員が関心を示し、議会に働きかけて、米国の国立健康研究所(NIH)に、代替医療の調査室が設置された。
このNIHが調査した結果、更に米国民の代替医療への関心と利用割合は高まる傾向にあり、1985年には、その利用率が40%を超えていることが判明した。

その後、NIHは、代替医療研究のための予算を増加するとともに、研究所内に「国立相補・代替医療研究所」を設置した。
また、この動きを受けて、ハーバード大学、コロンビア大学、スタンフォード大学、アリゾナ大学、ジョーンズ・ホプキンス大学、ミシガン大学などの13の大学に、統合医療センターがつくられ、研究費が支出されるようになった。
これらの研究費は年々増加しており、2005年には年間、約400億円にも及び、遂にはホワイトハウス内に“代替医療に関する大統領委員会”が設置されるに至り、政府が、その教育・研究の奨励、および関連企業の育成など、統合医療の推進および運営に積極的に関係するまでになっている。

欧米には多くの国立統合医療センター

このような代替医療、あるいは統合医療の国立研究所が英国、ドイツ、スイス、オーストリア、ノルウェー、スウェーデンなどのヨーロッパの各国に設置されるようになった。最近、この傾向はアジア及びアラブにも及び、中国、韓国、インド、タイ、マレーシア、ドバイなどに国立統合医療センターが開設された。すなわち、欧米、アジアなどの諸国は、国策として統合医療を支援しているのである。 わが国では、従来、漢方、鍼・灸、ヨーガなどの分野において、伝統医学や代替医療が行われていたが、近代西洋医学と比較して、必ずしも重要視されていなかった、と言える。

統合医療実現に向けての具体的方策とは

1)医療特区を設定し、問題点を明白にする。
先端医学センターを核として、周辺に代替医療、伝統医療などの施設を置き、統合医療による患者の臨床にあたる。
そして、安全性、有効性、費用対効果、各代替療法施術者・提供者の資格問題、現状の医療体制への導入する際の問題、医療政策の改革などを検討する。

2)既に世界においては統合医療に関する有効性、安全性、経済性などの研究が国家レベルで行われており、これを踏まえ、我が国においても国家的研究プロジェクトを推進する。

3)国立統合医療センター
統合医療を実践する全国の施設の連携を図り、更に人材、技術研究報告などのデータベースを構築すると共に、国際交流を行い具体的政策立案のためのデータを整理する。

4)医科大学に統合医療学部、学科を新設する。
人材を教育するために、教育、研修、研究の場としての充実を図る。

国民のニーズを満足させ、全人的医療が行われ、予防、健康の医療の方向を目ざし、更には医療費が節減されるということになると、政府も真剣に“統合医療”の推進を検討する必要を認識すると考えている。